EXHIBITIONS

mamoru「私たちはそれらを溶かし地に注ぐ/WE MELT THEM AND POUR IT ON THE GROUND」

mamoru still from "WE MELT THEM AND POUR IT ON THE GROUND" 2020

 ユカ・ツルノ・ギャラリーでは、mamoruの個展「私たちはそれらを溶かし地に注ぐ/WE MELT THEM AND POUR IT ON THE GROUND」を開催する。会期は6月5日〜7月3日。

 mamoruは1977年大阪生まれ。2001年ニューヨーク市立大学音楽学部卒業、16年ハーグ王立芸術アカデミー/王立音楽院・大学院マスター・アーティステック・リサーチ修了。平成27年度文化庁新進芸術家海外研修制度研修員。主な展示に「Archives of Salvage Archaeology」(国立台湾史前文化博物館、台東、2020)、「HER/HISTORY」(岸和田市立自泉会館展示室、大阪、2020)、「第10回恵比寿映像祭『インヴィジブル』」(東京都写真美術館、2018)などがある。

 mamoruは、日常のなかの微かな音に耳を傾ける行為に始まり、テキストやヴィジュアルイメージのなかで喚起される音を想像することや、歴史の記述からこぼれ落ち黙殺されてきた物事に目を向け、耳を傾け探求する姿勢を「リスニング」ととらえている。調査や資料から浮かび上がってくる声/語り/歌を紡ぎ、音を採取する「リスニング」を実践し、それをもとにテキストを書き、そしてこれら集合体として音楽と映像が多面的に織り成すパフォーマンスやインスタレーションで作品化してきた。

 本展では、日本統治時代の台湾東海岸で日本人考古学者によって発掘された新石器時代の住居跡にまつわる調査を中心に、歴史やアーカイヴにおける「リスニング」のアプローチから見えてくる、権力のメカニズムや抵抗の身振りといった、歴史の語りのなかで絡まりあう様々な力関係、言説、物質性をひも解き、想像を促す映像インスタレーションを発表する。

「私たちはそれらを溶かし地に注ぐ」と題された映像作品では、米軍空襲を受けながらも発掘調査を行った考古学者の研究報告とインタビューのアーカイヴをもとに、近代科学の探求としての重要性を持ちながらも、帝国主義の権力構造のなかで植民地政策に関わらざるを得なかった考古学者の声とその物語が提示される。そして、考古学者たちを襲い、遺跡付近に撃ち込まれた弾丸の行方を追うなかで出会った台湾先住民のひとつであるプユマ族の長老が持つ記憶を通して、まったく別の抵抗の物語が接続される。

 また新作の映像と彫刻作品では、プロジェクトにとって重要なモチーフとなった弾丸、そして太平洋戦争で使われた弾丸に用いられた鉛の多くがアメリカのオクラハマで採掘されたという史実を経由することで、繰り返し拾い集められ、溶かされ、歴史のなかでかたちを変えて姿を現れる鉛の物質性を考察することが試られている。

 なかでも、液体と固体の中間の物質であるガラスの内部に鉛を含んだ鉛ガラスを使った作品では、両物質の可変的なあり方が、歴史や歴史の語りを完結したものとして扱うのではなく、歴史資料やアーカイヴのなかにある不在や隙間と現在の世界とのつながりに耳を傾け、想像する作家の実践と共鳴するものとしてもとらえられている。

 mamoruの「リスニング」による複合的な実践や作品は、私たちに歴史がどのように語られてきたのかを問う。同時に、その記述そのものから追いやられ、日常のなかで見落とされてきた個別で具体的な出来事、人物、言説、資料、物質たちの音や響きに耳を傾け、想像の幅を広げていくことの必要性を働きかける。