EXHIBITIONS

梅沢和木「画像・アラウンドスケープ・粒子」

2021.06.05 - 07.03

梅沢和木 画像の粒子- T we Ive Style- 2021

梅沢和木「画像・アラウンドスケープ・粒子」展示風景より

 RICOH ART GALLERYが銀座の三愛ドリームセンター内にオープン。こけら落としは、梅沢和木による個展「画像・アラウンドスケープ・粒子」を開催する。

 梅沢は1985年埼玉県生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。インターネット上に散らばる画像を再構築し、圧倒的な情報量に対峙する感覚をカオス的な画面で表現する。CASHI所属。主な展覧会に、「黒の夢」(CASHI、東京、2020)、「Tokyo Pop Underground」(Jeffrey Deich、ニューヨーク・ロサンゼルス、2019)、「百年の編み手たち―流動する日本の近現代美術―」(東京都現代美術館、2019)、「HYPER LANDSCAPE 梅沢和木 × TAKU OBATA」(ワタリウム美術館、東京、2018)などがある。

 デジタル世界と現実世界を行き来する梅沢の作品は、インターネット上にある様々なデジタル画像を引用してコラージュし、さらにそこに加筆を行うことで生み出されてきた。本展で発表する新作は、デジタルノイズ表現や凹凸による立体感を、リコーが展開する「StareReap」の印刷技術を用いて制作されたものだ。両者のコラボレーションにより梅沢作品の重層的な側面がより明確になり、作品の持つ本質が私たちに新しい価値を訴えかける。

 ピクセルを最小単位とするデジタル画像は、ある意味、現実世界を単純化している。「StareReap」でそれを実体化させるには、インクの粒子を噴射し定着させ、それを何層にも積み重ね、微細な凹凸をつくり上げていく。デジタル世界のピクセルという単位にリアリティ感じる梅沢は、このことにフォーカスし「粒子」を本展のキーワードとした。さらに梅沢は今作ほど、制作過程で何百も発生するレイヤーの上下関係を厳密に見直したことはないと言う。

「加筆するとき、支持体と絵具の粒子が結合し定着し合い自らの脳内にあるイメージと結びつく瞬間を手繰り寄せ続けている」。梅沢がこうして語る新シリーズを鑑賞者が見る時、画像上に描かれているのは影か、実際の凹凸か、印刷あるいは加筆したものなのかなど、「見える」 ことと「在る」ことのあいだを行き交う認識の揺らぎが生じるだろう。

 梅沢はこれまで、ミクロとマクロ、デジタルとアナログ、仮想空間と実空間、RGBとCMYKといった2つの異なる世界観を往来し、最後に作品として存在させてきた。本展では、インクを粒子レベルで統合させた、梅沢の新たな表現への挑戦を見ることができる。