EXHIBITIONS

三輪龍氣生の陶 命蠢く

三輪龍氣生 豊饒の視志 2020 撮影=伊藤晃

本展出品作「人間シリーズ」「淑女と紳士」「泣くⅡ」など1960年代から1970年代の代表作 撮影=塚原琢哉

三輪龍氣生 黒のソナチネ 1977 大阪市立東洋陶磁美術館蔵 撮影=渞忠之

三輪龍氣生 やわらかい海1 1997 山口県立萩美術館・浦上記念館蔵 撮影=田中学而

三輪龍氣生 女帝・荘厳 2015 菊池寛実記念 智美術館蔵 撮影=伊藤ゆうじ

三輪龍氣生 白昼夢 2019 撮影=伊藤晃

 三輪龍氣生(みわ・りゅうきしょう、本名・龍作、十二代休雪)は、陶によるシンボリックかつ具象的な造形で、その時々の自身の心情をかたちにする陶芸家。率直に表現される三輪の作品は、生命への喝采、官能の歓び、苦悩、死についての考察、祈りといった人間の本性と言える普遍的なテーマを示している。

 1940年、江戸時代から続く萩焼の名門陶家に生まれた三輪だが、茶の湯の世界で親しまれる萩焼の伝統に立脚するよりも、やきもので「自己」を表現するために、既存の概念にとらわれない自由な制作を求めていった。彫刻的なアプローチで造形をなし、頭蓋骨や乳房、苦悶の胸像や鷲などの具象的なモチーフに自身の死生観や憧憬、情念を投影している。

 本展では、人間の根源に迫る三輪の陶の造形を、初期の代表作から新作まで約80点を通して紹介。見どころのひとつとなる《豊饒の視志》は、2019年に「休雪」から「龍氣生」への改号後に制作された。本作と合わせ、作家の新境地を感じさせる16点の新作が並ぶ。

 具象的な造形に、やきものならではの質感や量感、故郷・萩市の風土や伝統を昇華させて制作を深めると同時に、個性を表現してきた三輪。その作品に立ち上がる圧倒的な生命感は、鑑賞者の内奥に潜む感情をも刺激し、命に訴えかける。

※菊池寛実記念 智美術館は、緊急事態宣言の発出に伴う要請などを受け、4月25日〜5月31日まで臨時休館。6月1日から再開し、本展の会期を8月8日まで延長して開催(当初は8月1日まで)。最新情報は公式ウェブサイトへ。