EXHIBITIONS

デミタスカップの愉しみ

2021.04.17 - 06.13

ミントン窯 デザイン:クリストファー・ドレッサー
ターコイズ地七宝繋ぎに花文カップ&ソーサー 1871 村上和美コレクション

マイセン窯
貼り付け花鳥とスノーボール蓋付きカップ&ソーサー 1860-1880 村上和美コレクション

コールポート窯
メダリオンとジュール金彩カップ&ソーサー 1891-1919 村上和美コレクション

メーカー未詳(イギリス) 1900 村上和美コレクション

 群馬県立近代美術館で企画展「デミタスカップの愉しみ」が開催。本展では、デミタスカップ・コレクターである村上和美のコレクションから精選した逸品約380点を紹介する。

 16〜17世紀にかけて東洋から西洋にもたらされた喫茶の習慣と上質な陶磁器は、その後のテーブルウェアの成立や、装飾芸術の発展に貢献した。江戸初期の「伊万里焼」や「柿右衛門」など日本の磁器も西洋に輸出され、優れた色絵の技術や異国的な文様で人気を博し、東洋陶磁器に魅せられた王族や大貴族が自領においてそれらに匹敵する磁器生産の試みを後押した。

 ヨーロッパのテーブルウェアの様式は19世紀に確立。そのなかで異色な存在として現れたのが、濃いコーヒーを飲むための小さなコーヒーカップ、「デミタス(Demitasse)」だ。中産階級が台頭したヨーロッパではコーヒー文化の浸透とともにデミタスも広まっていった。

 19世紀の半ば以降には、日本的なモチーフや構図を発展させたジャポニスム様式が異彩を放ち、欧州の名窯がその国ならではの特徴あるデザインを提示。さらに世紀末にはジャポニスムの影響を受けたアール・ヌーヴォー様式が発展し、1920年代からはアール・デコ様式のデミタスも登場する。また日本で生産されたヨーロッパ向けの作品もこれらに加わり、 人々の生活の場面を彩った。

 本展では、村上和美コレクションから約380点を選び、19世紀後半〜20世紀初頭につくられたアンティーク・デミタスを中心に展示。時代の感性を映し出すデザインの変遷と、掌に載るサイズに大胆な、また繊細華麗な技巧を凝縮したアンティーク・デミタスの豊かな世界を楽しみたい。

※群馬県立近代美術館は新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策のため、5月16日〜6月13日まで臨時休館。最新情報は公式ウェブサイトへ。