EXHIBITIONS

サントリー美術館特別協力

ガラスに挑む―素材へのまなざし

2021.04.10 - 06.22

室伸一 ARK 1990 サントリー美術館蔵 撮影=小嶋宏和、斎城卓

横山尚人 花の番人 1988 サントリー美術館蔵 撮影=近藤正一

家住利男 でっぱりとへこみ 1992 サントリー美術館蔵 撮影=家住利男

渋谷良治 時の記憶 ’90-Ⅳ 1990 サントリー美術館蔵 撮影=小嶋宏和、斎城卓

扇田克也 BALANCE 1994 サントリー美術館蔵 撮影=小嶋宏和、山本正治

 20世紀半ばに胎動を始め、1980~90年代に世界的な興隆期を迎えた現代グラスアート。本展「ガラスに挑む―素材へのまなざし」では、国内有数のガラスコレクションを所蔵するサントリー美術館のガラス作品16点と、富山市の所蔵するガラス作品8点を展示し、この時代の活気に満ちたガラス芸術の様相を紹介する。

 サントリー美術館の現代ガラスコレクションは、1988〜98年にかけて全8回開催された「サントリー美術館大賞展」への出品作品からなる。創立以来「生活の中の美」をテーマとして活動していた同館は、人々の意識や生活環境が急激な変化を見せた20世紀末において、美術と工芸の境界にとらわれない新たな時代の造形を探求することを目指し、この大賞展を開催した。陶や金属、繊維、ガラスなど、とくに工芸の分野で用いられてきた素材による造形芸術を対象として行われた同展には、多くのガラス作家が参加した。

「サントリー美術館大賞展」に出品したガラス作家たちは、透明性や表面に現れる様々な質感、繊細さ、物体としての量感など、素材の持つ特徴やそこから生まれる表情をそれぞれの立体造形へと積極的に取り入れ、独自の表現を展開。これらの作品は、自らの扱う素材と真摯に向き合い、新たな造形表現を探求し続けた作家たちの、飽くなき挑戦の証と言える。

 本展では、キャンドルスタンドやボトルなどの工芸的なフォルムを借りながら、動物や植物といったモチーフを取り入れた鮮やかな色ガラスの作品を展示する「かたちを彩る」、光の屈折や反射というガラスの素材の特性を生かし、宇宙や感情の可視化、また視覚の不確かさを明らかとするような作品に注目する「光を導く」、ガラスの質感や厚みの変化を利用して、作品の内側に特定の空間を構築する作家たちの試みを紹介する「空間を形作る」、そしてガラスの物質性があらわとなった、繊細さや緊張感を呼び起こす作品が揃う「物質性をあらわす」の4章で構成。1980~90年代におけるガラス作家たちの充実した造形表現の数々が一堂に会する。

 出品作家は、家住利男、生田丹代子、イワタルリ、扇田克也、ウラジミール・クライン、渋谷良治、ヤン・ゾリチャック、高橋禎彦、中尾祐子、橋本祐二、福西毅、リチャード・マイトナー、室伸一、横山尚人、マリア・ルゴッシーの15名。