EXHIBITIONS

渡辺省亭 -欧米を魅了した花鳥画-

渡辺省亭 牡丹に雛図(花鳥魚鰕画冊) 絹本着色 一面(全二十一面のうち) メトロポリタン美術館蔵

渡辺省亭 牡丹に蝶の図 1893(明治26) 絹本着色 一幅 個人蔵

渡辺省亭 鳥図(枝にとまる鳥) 1878(明治11) 紙本淡彩 一面 クラーク美術館蔵 Clark Art Institute. clarkart. edu

渡辺省亭 四季江戸名所(夏 不忍池蓮)(部分) 絹本着色 四幅のうち 個人蔵

渡辺省亭 四季江戸名所(春 上野清花)(部分) 絹本着色 四幅のうち 個人蔵

渡辺省亭 迎賓館赤坂離宮・七宝額原画 淡紅鸚哥に科木 絹本着色 一面(全三十図のうち) 東京国立博物館蔵 Image : TNM Image Archives ※前期展示:3月27日〜4月25日

濤川惣助作 渡辺省亭原画(推定) 柳燕図花瓶 明治時代後期 七宝 一口 京都国立近代美術館蔵 撮影=木村羊一

 日本美術の知られざる名匠・渡辺省亭(わたなべ・せいてい、1852~1918)の全貌を明らかにする初回顧展「渡辺省亭 -欧米を魅了した花鳥画-」が開催される。

 省亭は明治から大正にかけて活躍した画家。江戸・神田佐久間町に生まれ、16歳で歴史画家・菊池容斎に入門し、筆遣いや写生の基礎を学んだ。1875(明治8)年に起立工商会社に入社し、輸出用工芸図案を担当。同社派遣により日本画家として初めてパリに渡り、78(明治11)年のパリ万博に出品した。この時、エドガー・ドガをはじめ印象派の画家たちと交流。繊細で洒脱な花鳥画は、海外でも高い評価を得た。

 帰国後は、国内外の博覧会や展覧会に花鳥画を中心に積極的に発表。明治20年代には日本的な情緒と西洋的な写実を融合させた自己様式を確立し、当時の日本画界で突出したデッサン力や描写力は、西洋人の目さえも驚かせた。明治30年代以降、美術展覧会・美術団体から距離を置いて市井の画家となり独自に活動。その人気は高く、明治40年代からは同時代で群を抜く高い画料で仕事をしたが、弟子をとらず、1918(大正7)年に亡くなる直前まで、ひとりで注文に応じて旺盛な制作を行った。

 本展では、迎賓館赤坂離宮の七宝額原画を描くなどその実力は認められながらも、市井の画家であることを貫いたため、知る人ぞ知る画家となった省亭の全画業を紹介。これまで知られていなかった省亭の個人コレクションを中心に展示するほか、「花鳥画の名手」として欧米でも評価され、名だたる美術館に収蔵されている作品のうち、メトロポリタン美術館などからの優品も里帰りする(会期中、展示替えあり)。

※緊急事態宣言の延長に伴い、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため臨時休館中の「渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画―」は、5月23日をもって閉幕。詳細は展覧会ウェブサイトへ。