EXHIBITIONS

眼でふれる―5つのまなざし

2021.02.16 - 03.28

岡崎紀 浮いた風景 1997

小林敬生 蘇生の刻 S62-8 1987

吹田文明 華々 1994 © Fumiaki Fukita 2020 /JAA2000263

永瀬義郎 浪曼(版画集『浪曼』より) 1978

ゼロ・ヒガシダ KIYOMORI TAIRA 2017 個人蔵

 東広島市立美術館では、5人の作家に焦点を当てた展覧会「眼でふれる―5つのまなざし」を開催している。参加作家は、ゼロ・ヒガシダ、小林敬生、永瀬義郎、吹田文明、岡崎紀(おかざき・おさむ)。独自のイメージを追求する5人の表現の変遷から、それぞれのまなざしに迫る。

 東広島市八本松に制作拠点を構えるゼロ・ヒガシダ(1958〜)は、ステンレスやブロンズなどの素材と対峙し、具象や抽象という概念を超えた根源的な精神世界をつくり出す。

 小林敬生(1944〜)は、木口木版としては異例の大型作品の制作を試み、その作品のモチーフは幼少期を過ごした東広島市豊栄町や西条町の豊かな自然から影響を受けている。

 戦争のため一時期、安芸津町(現・東広島市)に疎開していた永瀬義郎(1891〜1978)は、創作版画の普及に尽力しつつ、固定観念にとらわれない版画制作を行い、1922年には『版画を作る人へ』を出版して版画家を目指す人々に影響を与えた。

 いっぽう、現代の版画教育において多大に貢献した吹田文明(1926〜)は、銅版画技法のメゾチントを木版へ転用した「ラワン・メゾチント法」を考案し、その鮮やかで明快な作品群は国際的な評価を得てきた。

 そして西条町出身の岡崎紀(1938〜)は、花や人体などから想起して、色やかたちを緻密に構成した心象風景を、主に油彩によって描き出している。

 本展では、5人の作家の初期から近年、永瀬に関しては晩年までの作品を展示。具象的な表現からの脱却を試み、目にはみえない「根源的なるもの」をかたちにした立体作品、従来の木版画に独自の改良を加えた新しい版画表現など、5人が創造の可能性に挑んだ軌跡を追う。