つながりのデザイン

　CCGA現代グラフィックアートセンターは展覧会「つながりのデザイン」を開催。本展ではCCGA収蔵のDNPグラフィックデザイン・アーカイブより、「つながり」や「絆」をキーワードにポスター作品を選んで展示する。

　東日本大震災の発生直後、私たちの間で頻繁に語られた「絆」の言葉。その後の10年間、大きな自然災害や感染症によって世のなかが大きく動いた。震災発生時は、「絆」という言葉に救われた多くの人いた半面、安易なキャンペーンとして用いられることもあったのではないだろうか。もともと個別の存在であるもの同士の「つながり」は、相手に寄り添うなどの良い面だけではなく、負の面を内包することもあるだろう。

　また芸術や文化面に目を向けると、近年それらを地域活性化やつながりの創生のための資源として活用する動きも広まっているが、たんなる人集めのための道具としてみなされるのではないかという懸念がある。
　
　グラフィックデザインの役割のひとつとして挙げられるのが、抽象的な物事やメッセージを視覚化すること。コンセプトやスローガンなどの概念や思想という目には見えないものを、目に見える状態へ落とし込み、対象者に伝えることがデザインのひとつの側面だ。それは、つねにグラフィックデザインにはコミュニケーションが介在し、「つながり」とは不可分の関係にあることを示している。

　本展は、グラフィックデザインに見られる「つながり」の図を、東日本大震災から10年目に改めて見直すもの。直接的な交流を避け、距離をとることが求められるポストパンデミックの時代で、他との関係性に目を向ける。