EXHIBITIONS

「写真の都」物語 ―名古屋写真運動史:1911-1972―

2021.02.06 - 03.28

山本悍右 題不詳(《伽藍の鳥籠》のバリエーション) 1940 名古屋市美術館蔵

 近代の名古屋の写真表現は、1920年代に日本のピクトリアリズム(絵画主義的写真)を牽引した「愛友写真倶楽部」に始まり、各時代を通じて全国でも屈指の「写真都市」であった。

 日本を代表する写真家のひとり、東松照明も名古屋出身。伊良湖岬や日本アルプスなど、海と山に近く、撮影地に恵まれた同地の写真家たちは、風景写真の新たな境地を開拓してきた。

 当初、「旦那衆」の道楽として興った写真の趣味は、やがて広くアマチュアに拡がり、1930年代半ばには名古屋独自のアマチュア向け月刊写真雑誌が創刊。「前衛写真」と呼ばれた名古屋発信の表現が全国を席巻した。

 戦後にシュルレアリスムの表現が復活すると、敗戦後の社会生活を凝視するリアリズム運動が拮抗。その後、東松照明らによって「中部学生写真連盟」が組織されると、若い感性が独自の表現を模索するも、その一部はやがて学生運動へとまとまっていった。

 連綿と続く名古屋の写真表現においてさらに特筆すべきは、写真家たちの活動が個々の作品の発表にとどまることなく、機関誌や会報、写真集の出版を通して、自分たちの表現志向や意志を伝えようとしたこと。各時代に出版された多種多様な資料群は、名古屋が全国でも屈指の「写真都市」であり続けたことを証明するものとも言えるだろう。

 本展は、名古屋の写真表現の展開を連続する「運動体」としてとらえ、時代のなかで思潮を反映しながら展開された軌跡を、作品と資料によってたどる。出展作家は、坂田稔、東松照明、山本悍右ら。