近代博覧会と京都の産業 ―明治初期の観光と染織産業を中心に

　京都文化博物館が、近代京都の一端を再検証する展示「近代博覧会と京都の産業 ―明治初期の観光と染織産業を中心に」を開催している。

　幕末から明治初期にかけて、京都は政治的混乱と戦火に見舞われ、さらに東京への遷都によって心情的にも経済的にも大きな打撃を受けた。その状況から京都は新たな近代都市を目指し、産業の活性化や貿易振興が積極的に進められ、都市再生を図っていく。

　京都府出仕の槇村正直（明治4年大参事、明治8年知事）のもとで、化学の研究教育機関「舎密局」（せいみきょく）が設置され、勧業施策を実施。舎密局の開設と運営に尽力した明石博高は、陶磁器・七宝・硝子・石版術・写真術・石鹸・染織などの分野で成果をあげた。

　また、京都の産業を復興するための事業のひとつとして、1871（明治4）年、東京に先がけて「京都博覧会」を開催し、海外で開かれる万国博覧会にも京都から最新の産業の成果を出展。1895（明治28）年には、 平安遷都1100年の記念として、岡崎において新政府主催で全国規模の「内国勧業博覧会」の4回目を開催した。

　本展では、京都の近代化の一側面として「観光」と「染織産業」に着目。「京都博覧会」で来京した外国人のために開業した宿泊施設「也阿弥（やあみ）楼」（のちの也阿弥ホテル）や1873（明治6）年の開催時に発行された英文の京都観光ガイドブックなどの資料を展示するほか、近世まで寺社や皇室の需要が大きかった染織業については、海外に目を向けて新たな需要を見出していくとともに、西欧の新しい技術を積極的に取り入れていった活動を紹介する。