EXHIBITIONS

ダグ・エイケン「New Ocean: thaw」

ダグ・エイケン ice forms VII 2008(《New Ocean:thaw 》、2001年の制作用スチル) © Doug Aitken Courtesy of the artist

 アメリカ人アーティスト、ダグ・エイケンによるインスタレーション《New Ocean: thaw》を紹介する展覧会が、エスパス ルイ・ヴィトン東京で開催されている。

 エイケンは1968年、アメリカ、カリフォルニア州レドンドビーチ生まれ。アート・センター・カレッジ・オブ・デザイン(カリフォルニア州)で学ぶ。99年にインスタレーション《electric earth》でヴェネチア・ビエンナーレ国際賞を受賞。エイケンの作品は、写真、彫刻、建築的介入から、映画、サウンド、シングルおよびマルチチャンネル・ビデオ、インスタレーションまで多岐にわたり、これまで世界各地の多数の展覧会で取上げられてきた。現在は、ロサンゼルスを拠点に活動している。

《New Ocean: thaw》は、抽象化の一歩手前とも言えるイメージが万華鏡のように映し出されるプロジェクション。アラスカの景色、その空、解けゆく氷河が目の前に現れる。
 
 自然の広大さに関連して生じる、ロマンティックな感情に迫るこの作品は、ほぼ半円形をなすように配置された3面スクリーンを2組設置した投影形式を採用しており、一見、19世紀のパノラマ絵画を彷彿させる。しかしエイケンの構想は、環境の大惨事が際立つ21世紀の夜明けである。

《New Ocean: thaw》は、固定したイメージ(氷)であると同時に、動くイメージ(水)でもあり、写真と映画のあいだにある。映し出される太陽は、レンズによるフレア現象や色収差を呈して崩れ散乱するいっぽう、氷河の音は編集され、電子音とミキシングされ、自然と人為のあいだの曖昧さが鑑賞者に困惑をもたらす。

 今回エスパス ルイ・ヴィトン東京のために《New Ocean: thaw》はアーティストによって再構成され、没入型のインスタレーションとして展示。エイケンは本作において、アラスカの詩情あふれる広大さへの新たな視点を提示し、気候変動、大災害、氷河融解といった現代の状況について投げかける。

 なお本展は、これまで未公開のフォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵作品を東京、ミュンヘン、ヴェネチア、北京、ソウルのエスパス ルイ・ヴィトンで展示する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として開催される。