EXHIBITIONS

宇平剛史の装幀:呼吸する書物|Breathing Books

2020.10.23 - 11.23

「宇平剛史の装幀:呼吸する書物|Breathing Books」より

 東京を拠点に活動するアーティスト・デザイナー、宇平剛史(うひら・ごうし)が手がけた装幀本を紹介するフェア「宇平剛史の装幀:呼吸する書物|Breathing Books」がNADiff a/p/a/r/tで開催されている。

 宇平は1988年福岡県生まれ。東京都立大学(旧首都大学東京)システムデザイン学部卒業。19年に作品集『Skin(Folio Edition)』を自費出版。翌年、3331 ART FAIR 2020に参加し、小池一子賞を受賞する。装幀を手がけた主な書籍に、沢山遼『絵画の力学』(書肆侃侃房、2020)、荒川徹『ドナルド・ジャッド』(水声社、2019)、横田大輔『Vertigo』(Newfave、2014)などがある。

 大学を卒業後の2011年より、グラフィックデザイナーとして活動を始めた宇平は、これまで美術の領域でも積極的に実践を重ね、様々なアーティストブックや人文書などの装幀を担当。18年頃からは、デザインの仕事と並行しながら、自らアートワークの制作にも着手し、19年に人間の皮膚を被写体とした連作「Skin」を発表。同シリーズでは、多様な肌理をもつ人間の皮膚が高解像度で接写され、白黒の繊細な階調によって表現されている。

 宇平にとって何かを制作するという行為は、「現前する世界を繊細にまなざし、その未知さや神秘さの襞(ひだ)へとわけいる過程で、何かに気づくこと」だと言う。同時に、紙や印刷といった物質へのフェティシズム的な感覚をもち、それらとの精緻な関わりのなかで作品を構築している。

 また、美学者・星野太が「Skin」シリーズについて寄せた文章「愛の設計」でも述べられているように、「もともとそこに存在する無限の肌理を、ただそれとして見せる」という姿勢が、宇平のアートワークにも装幀の仕事にも通底し、両者の実践は地続きにあると言える。

 本フェアでは、宇平の代表的な装幀本を展示・販売(一部書籍は展示のみ)。また同時期に、アートワーク「Skin」で構成する個展「Delicate Matters」がThe White(東京・神保町)で開催される。