EXHIBITIONS

宇平剛史「Delicate Matters」

2020.11.10 - 11.29

宇平剛史「Delicate Matters」より

宇平剛史「Delicate Matters」より

宇平剛史「Delicate Matters」より

 アーティスト、デザイナーの宇平剛史(うひら・ごうし)が個展「Delicate Matters」を、東京・神保町のThe Whiteで開催する。

 宇平は1988年福岡県生まれ。東京都立大学(旧首都大学東京)システムデザイン学部卒業。大学を卒業後の2011年より、グラフィックデザイナーとして活動を始め、これまで美術の領域でも積極的に実践を重ねながら、様々なアーティストブックや人文書などの装幀を手がけてきた。

 18年頃からはデザインの仕事と並行しながら、自らアートワークの制作にも着手。19年に人間の皮膚を被写体とした連作「Skin」を発表し、19年に作品集『Skin(Folio Edition)』を自費出版する。同名シリーズでは、多様な肌理をもつ人間の皮膚を高解像度で接写し、グレースケールの繊細な階調によって提示している。翌年に参加した3331 ART FAIR 2020にて小池一子賞を受賞する。

 宇平にとって何かを制作するという行為は、「現前する世界を繊細にまなざし、その未知さや神秘さの襞(ひだ)へとわけいる過程で、何かに気づくこと」だと言う。同時に、紙や印刷といった物質へのフェティシズム的な感覚をもち、それらとの精緻な関わりのなかで作品を構築している。

 また、美学者・星野太が「Skin」シリーズについて寄せた文章「愛の設計」でも述べられているように、「もともとそこに存在する無限の肌理を、ただそれとして見せる」という姿勢が、宇平のアートワークにも装幀の仕事にも通底し、両者の実践は地続きにあると言える。

 本展で宇平は、黒人差別の問題「Black Lives Matter」について、「これまでどこか自分とは距離のある感覚があったが、無関心や無知は問題への加担につながり、そうした意識にこそ怖さが潜んでいるのではないか」という内省から、黒人の肌を被写体とした作品で展示を構成。本展を、黒人差別の問題と真摯にかかわる時間と位置づける。

 なお本展と同時期に、NADiff a/p/a/r/t(東京・恵比寿)では、宇平が手がけた装幀本を中心に紹介するフェア「宇平剛史の装幀:呼吸する書物|Breathing Books」が開催。