もうひとつの江戸絵画 大津絵

　大津絵とは、江戸時代初期より東海道の宿場大津周辺で量産された手軽な土産物のこと。わかりやすく面白みのある絵柄が特徴で、全国に広まりまったが、安価な実用品として扱われたためか現在に残されている数は多くない。

　近代に入って街道の名物土産としての使命を終えた大津絵は、多くの文化人たちを惹きつけるようになり、文人画家の富岡鉄斎、洋画家の浅井忠、民藝運動の創始者である柳宗悦ら優れた審美眼の持主たちが、古い大津絵の価値を認めた。こうした傾向は太平洋戦争後も続き、文化勲章を受章した洋画家の小絲源太郎や染色家の芹沢銈介らが多くの大津絵を収集した。

　本展では、柳宗悦や小絲源太郎ら、近代日本の名だたる目利きたちが所蔵した大津絵の名品約150点が集結。これまで主に歴史資料・民俗資料として扱われてきた大津絵を美術としてとらえ直し、狩野派でも琳派でもなく、若冲など奇想の系譜や浮世絵でもない、もうひとつの江戸絵画としての大津絵の魅力に迫る（会期中展示替えあり）。