EXHIBITIONS

向山喜章「22・22」

2020.08.29 - 09.26

向山喜章 Napital 9 purple / blue 2020

 光を絵画にとどめる方法を探求してきたペインター・向山喜章の個展「22・22(にに・にに)」が開催される。

 向山は1968年大阪府生まれ。東京を拠点に活動。近年は、キャンバスに染み込ませるようにして様々な色を幾層にも重ねた、ミニマルな作品を発表している。

 向山は、2018年に参加したアメリカ・ラスベガスでの滞在制作プログラム、そして、19年に元離宮二条城(京都)で行われたグループ展「時を超える:美の基準」への出展を通じて、「己を消して事に仕えるというアーティストの役割とその地平を観る」に至ったと言う。

 幼少期を日本有数の密教の伽藍が立ち並ぶ高野山で過ごし、周囲の静謐な環境やそこに存在する密教美術にふれた向山。その地の大工として寺院の手入れを行っていた祖父を持ち、クラフトマンシップを学んだという向山にとっては、制作においていかに自身を消して制作に臨むのかという命題が根底にある。

 本展で発表される新作たちは、従来の価値観が様々な部分で変更を迫られるコロナ禍の状況下で制作された。

 アーティストによる造語としてつけられた作品タイトルからは、例えば《22Marugafuuga》は四季を、《Lusha 30》からは宇宙より光をもたらす盧遮那仏(るしゃなぶつ)を想起することができる。

 軽やかに彩られたキャンバスの大作は、日本を織り成す四季の豊かさを示唆すると同時に、密教的宇宙観とともに、パンデミックの状況下において平静をいかにして回復していくのかを祈り、問うもの。展示作品それぞれを通じて、様々なことが生じ続ける「生」の側面のみならず、人の「死」をその対照物として据え置き、「生」の姿を顧みるという作家の意思が込められている。