EXHIBITIONS

光―呼吸 時をすくう5人

2020.09.19 - 2021.01.11

佐藤雅晴 東京尾行 2015-2016 © Masaharu Sato

今井智己 Semicircle Law #42 2018.9.11 / 33km 2020 © Tomoki Imai

城戸保 光と蜜柑 2019 © Tamotsu Kido

佐藤時啓 光-呼吸 2020 © Tokihiro Sato

リー・キット Flowers 2018 © Lee Kit Photo by Shigeru Muto

 原美術館が最後の展覧会「光―呼吸 時をすくう5人」を開催。「慌ただしさのなかで視界から外れてしまうものに眼差しを注ぎ、心に留め置くことはできないか」という思いから企画された本展には、写真を中心に表現を展開する今井智己、城戸保、佐藤時啓の作品と、原美術館のコレクションから佐藤雅晴によるアニメーション、リー・キットのインスタレーションが展示される。

 今井は1974年広島県生まれ、98年東京藝術大学芸術学科卒業。本展では、福島第一原子力発電所から30キロ圏内の数ヶ所の山頂より、発電所の方向にカメラを向けて撮影された「Semicircle Law」(2013〜)に、原美術館から同方角をとらえた新作を加えて展示予定。「真昼」(2001)や「光と重力」(2009)などの静謐さを湛える初期作品を併せて展示し、今井作品に通底する意識を探る。

 城戸は1974年三重県生まれ、2002年愛知県立芸術大学大学院美術研修科修了。「突然の無意味」と自身が表現する、何気ない日常風景のなかで本来の役割や用途からズレた「もの」をとらえ、「見る事やある事の不思議」を考察してきた。また写真の構造にも関心を持ち、色や光による構図の追求や技術的実験を試みている。本展では原美術館での撮影も行い、日常生活の延長線上に現れる豊かな世界を作品化する。

 佐藤時啓は1957年山形県生まれ。81年東京藝術大学彫刻科卒業、83年同大学大学院美術研究科修士課程修了。80年代より光、時間、空間、身体、生命をテーマに写真表現に取り組む。代表作「光―呼吸」は、長時間露光を駆使し、風景のなかをペンライトや鏡を持って歩き回り、光と自身の移動の軌跡をフィルムに定着させるシリーズ。本展終了時に閉館となる原美術館と、2021年に原美術館ARCと改称して活動を続けていくハラ ミュージアム アークをモチーフに、デジタルカメラを用いた新たな「光―呼吸」を展示する。

 3人の作品に加え、実写映像を忠実にトレースしたアニメーションで独自の表現を追求した佐藤雅晴が、5年前に五輪へと向かう東京の姿を撮影しトレースした「東京尾行」(2015〜16)を公開。そして、制作する土地や展示空間の声を聞きながら日用品と絵画・映像を組み合わせる詩的な作品を手がけてきたリーによる、人工光と展示室に差し込む自然光が相まった静謐なインスタレーション《Flowers》(2018)が展示される。

 表れ方は異なるものの、そこにある時間や空間に光を当て、自身を取り巻く社会の息遣いをかたちにし続けてきた作家たち。見る人の心に深く語りかける5人の作品を通して、2020年の記憶を残せるよう、意識されいまま過ぎ去る時を掬い、見過ごされてしまいそうな光景を救う。

 1979年の開館以来、現代美術専門館の草分けとして多くの重要な展覧会を開催してきた原美術館は、建物の老朽化に伴い、本展の会期終了をもって閉館する。