EXHIBITIONS

文明と野蛮のアーカイヴ

「堂島リバービエンナーレ2019」展示風景

「堂島リバービエンナーレ2019」展示風景

「堂島リバービエンナーレ2019」展示風景

 ウイルスの起源は、現生人類の誕生以前の30億年前に遡る。文明化した地球環境においてウイルスは強かに変容を繰り返し、そしていまやコロナウイルスによって、文明化した人類とは何かという問いが私たちに突きつけられている。

「堂島リバービエンナーレ2019」は新型コロナウイルスが感染拡大する6ヶ月前に開催された。本展は、ジャン=リュック・ゴダールの映画『イメージの本』と、ゲルハルト・リヒターの「アトラス」のアップデート版809点の双方の作品群が携えている、戦前から戦後の「アーカイヴ」を突き抜けるビジョンを対峙させた。さらに戦後世代のトマス・ルフやフィオナ・タン、ダレン・アーモンドを交え、東西冷戦構造の終焉を迎える直前に生まれた佐藤允、そして湾岸戦争後世代の空音央とアルバート・トーレンの各時代を代表するアーティストを迎えた。

 こうして「作品表現=時代精神」を提示し続けているアーティストを選定し、各作家が生まれた時代(1930〜1990)から現代に至る歴史的変遷を表象した作品と重ね合わせて紹介。そのねらいは、「文明と野蛮」の関係性を探究することによって、野蛮性や不条理性が潜む人間存在そのものを浮かび上がらせようとするものであり、本展が掲げた「文明と野蛮」のコンセプトは、ポストコロナへと地続きとなる表明となった。

 スクールデレック芸術社会学研究所で開催される「文明と野蛮のアーカイヴ」展は、「堂島リバービエンナーレ2019」(2019年7月27日~8月18日)の完全ドキュメントとして書籍化された『文明と野蛮』(新曜社)に掲載されている膨大な作品の関連資料や、展覧会会場の模型を展示。さらに佐藤允の描き下ろし作品も展覧される。改めてコロナ後の未来的ビジョンを重ね合わせて再考し、問題提議を行う。