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トーマス・ルフ

Thomas Ruff

 トーマス・ルフは1958年ドイツ生まれ。デュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に学んだ「ベッヒャー派」のひとり。初期では、ドイツ人家庭の典型的な室内風景を撮り続けた「室内」や、知人の肖像を引き伸ばし、各々の個性を比較した「ポートレイト」などのシリーズを発表。80年代末よりデジタル加工を取り入れ、インターネット上のポルノ画像をぼかして作品化した「ヌード」(2000〜02)、既存のデジタル画像をブロックノイズが生じるほど拡大させた「jpeg」(2004〜)などの実験的作品を制作。第三者によって撮影された写真を再構築することで、視覚や既成のイメージに対する考察と写真表現の拡張を試みている。

 そのほかの主な作品に、日本のマンガやアニメーションを取り込んで判別不可能になるまで加工した「基層」(2001〜)、衛星カメラが自動的に撮影した惑星の画像を用いた「カッシーニ」(2006〜)、数理曲線を3Dで再構成し、平面作品に変換した「サイクルズ」(2008〜)など、建築・都市風景・ヌード・天体ほか、様々なテーマを扱う。ドクメンタ9(1992)、第46回ヴェネチア・ビエンナーレ(1995)などの国際展に参加。2001〜04年にかけて大回顧展を開催し、世界9館を巡回。2000〜06年までデュッセルドルフ芸術アカデミーで教鞭をとった。16年に東京国立近代美術館と金沢21世紀美術館で日本初の回顧展が開催された。