EXHIBITIONS

エッシャーが、命懸けで守った男。

メスキータ

2020.07.05 - 08.30

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ ワシミミズク 1915 個人蔵 Photo by J&M Zweerts

サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ ヤープ・イェスルン・デ・メスキータの肖像 1922 個人蔵 Photo by J&M Zweerts

『ウェンディンゲン』表紙 1931 リトグラフ(メスキータのデザインによる) 個人蔵 Photo by Martin Wissen Photography, Borken, Germany

 オランダの画家・版画家、メスキータの日本初となる回顧展が宇都宮美術館に巡回する。

 サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868~1944)は、19世紀末から20世紀初頭のオランダで活躍した画家、版画家、デザイナー。大胆に単純化された白と黒の画面を特徴とし、見る者に強い印象を残す。知的に構成された木版画を手がけたいっぽうで、メスキータは幻想性に満ちたドローイングを描き続けた。その表現はシュルレアリスムにおけるオートマティスム(自動記述)の先駆けとも言われている。

 ユダヤ人だったメスキータは1944年1月31日の夜に家族とともに家から連れ去られ、ほどなくしてアウシュヴィッツ強制収容所で生涯を閉じた。

 美術学校で教壇に立ったメスキータの教え子のなかに、だまし絵や数学的なパターンの版画で名高いM.C.エッシャーがおり、敬愛する師が連行されたことを知ると、作品200点ほどをアトリエからひそかに持ち帰って、戦争中も守り抜いた。ほかにもメスキータの息子の友人らが作品の継承に務め、そうした人々の努力のおかげでメスキータの名前と作品がいまにある。

 本展は、メスキータの日本における初めての回顧展。悲劇にも負けずに残された作品の魅力に触れる絶好の機会となる。