EXHIBITIONS

没後35年 有元利夫展 花降る空の旋律(しらべ)

有元利夫 花降る日 1977 三番町小川美術館蔵 ©︎ Yoko Arimoto

有元利夫 花火のある部屋 1979 東京オペラシティアートギャラリー蔵 ©︎ Yoko Arimoto

有元利夫 花吹 1975 三番町小川美術館蔵 ©︎ Yoko Arimoto

※2020年6月25日より開催予定だった「没後35年 有元利夫展 花降る空の旋律(しらべ)」は、新型コロナウイルス感染症の感染症拡大の影響により、開催を中止。詳細は公式ウェブサイトにて案内。

 東西の古典が融合する、幻想的な世界を描いた夭折の画家・有元利夫の、東京では10年ぶりとなる大規模回顧展が開催される。

 有元は1946年岡山県に生まれ。東京・谷中育ち。東京藝術大学美術学部デザイン科で学んだ後、デザイナーとして電通に勤務するも3年後に退社し、画家一筋の道を選んだ。81年、若手画家の登竜門である安井賞を受賞。一躍画壇の寵児となるが、病に倒れ、38歳という若さでこの世を去った。

 学生時代に旅したイタリアでフレスコ画の魅力にふれ、日本の仏画とのあいだに共通の美を見出し、岩絵具や箔を駆使した独自の技法を追求した有元。また、しばしば風化したものの風合いを好み、あえてキャンバスに剝落を、額縁には虫食い穴をうがつなど、マチエールにも強くこだわった。

 作品では主に花や音楽、手品、花火、アルルカンなどをモチーフとし、これらを浮遊させて描いたのも、有元作品の大きな特徴のひとつ。人物の描写においては西洋的でありながら東洋的な香りも漂い、特定のイメージを押しつけない、エキゾチックな印象を与える。

 こうした東西の技法が織り成す有元の絵画は、儚げに美しく懐かしくもあり、画面に漂う幻想的な世界観が、いまも見る者の心をひきつけてやまない。

 没後35年を記念して開催される本展は、創作活動に寄せた有元自身の言葉とともに作品をたどり、色あせることのない魅力に迫るもの。立体作品やスケッチ、初期のデザインワークもあわせて展示し、タブロー(絵画)とは異なる表情を見せる、有元の豊かな想像性に注目する。