EXHIBITIONS

久野彩子「line」

久野彩子 JP392 2020 撮影=市川森一

 金属を素材に、空想上の都市風景を表現するアーティスト・久野彩子の個展が開催される。

 久野は1983年東京都生まれ。2008年武蔵野美術大学工芸工業デザイン科金工専攻卒業、10年東京芸術大学大学院美術研究科工芸専攻(鋳金)修了。主に「ロストワックス鋳造」という技法を用いて、細やかなパーツを寄せ集めるように作品を制作している。

 初期には、想像上の未来空間を思わせるような塊が崩壊するイメージの作品を発表。近年は、現実世界の道路や路線図、水路など地図上のかたちをベースにするなど本物の都市の要素を取り入れ始める。

 制作にあたっては丹念なリサーチのもと、同時に時事的要素も考慮し、より一層現実の世界に関わりを持つことで、たんなる工芸技術の集積に陥ることなく、現代に生きる作家としてものづくりに取り組んでいる。

 本展では、これまで自身が提示してきたかたちと規模感に対して、新たな方向性をもって挑戦した新作を発表。初期の手のひらに乗る小さく繊細な作品から、近年のサイトスペシフィックな表現へ、作家の新たな展開を見ることができるだろう。