EXHIBITIONS

勅使河原 蒼風

©︎ Sogetsu Foundation / Courtesy of Taka Ishii Gallery

 戦後の日本美術史に大きな足跡を残した、いけばな草月流の創設者・勅使河原蒼風(てしがはら・そうふう)の個展が開催される。

 華道家・勅使河原和風の長男として1900年に生まれた蒼風は、幼少期よりいけばなの指導を受け、卓越した才能を発揮し注目を集めた。しかし、形式主義的なそれまでのいけばなに疑問を持ち、父と決裂して1927年東京にて草月流を創流。従来のいけばなを大きく逸脱する戦後の「前衛いけばな運動」を、小原豊雲や中川幸夫らとともに主導し、空前のいけばなブームを巻き起こした。

 蒼風は、いけばなにモダンアートの実験精神を取り入れ、戦後復興期には《散歩》や《汽関車》(ともに1951)など、鉄からなる花器と植物を組み合わせた作品を制作。その後、花を用いない鉄製の立体作品《群れ》(1953)を手がけ、鉄や石、木などの素材を花と等価に扱うことで、形骸化した型からいけばなを解放した。

 52年の初渡米、55年の初渡欧を経て、蒼風は松の根の有機的なかたちを活かした木彫作品「樹獣」(1955)を発表。以降、作品に使用する素材は樹根や樹塊などの木に移行し、伊勢神宮参宮博覧会のシンボルタワーとして制作した高さ30メートルのいけばな《摩天》(1958)、『古事記』を引用した60年代の代表作《八雲》(1962)と《ちから》(1963)など、植物の強靱な生命力を宿す大規模な作品を次々と展開した。

 本展では、蒼風の初期の重要作品《汽関車》を中心に、50〜70年代にかけて制作された立体作品群と書を、貴重な資料とあわせて展示する。