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中谷ミチコ : 白昼のマスク / 夜を固める

中谷ミチコ 夜を固める1 2019 Photo by Matsubara Yutaka

中谷ミチコ 川の向こう、舟を呼ぶ声 2018 Photo Hayato Wakabayashi 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018出品作

 中谷ミチコは1981年東京都生まれの彫刻家。2005年多摩美術大学美術学部彫刻科を卒業後、ドイツに渡り、10年にドレスデン造形芸術専門大学彫刻科を卒業。同年、VOCA展奨励賞を受賞した。12〜14年に文化庁新進芸術家海外研修員として再びドイツに滞在。帰国後は三重県を拠点に活動し、作品発表を重ねてきた。

 まず粘土原型の型をとり、その凹面状の雌型に透明樹脂を流し込んだ半立体のレリーフ作品を数多く手がける中谷。モチーフが盛り上がる一般的なレリーフとは異なり、凹凸が反転した作品は柔らかく、あいまいで、中立的な気配を漂わせると同時に、くぼんだ空虚が実在するように見える不思議な雰囲気を持つ。

 最初のドイツ留学の際に生まれたこの作風は、慣れない異国の地で孤独と向き合い描きためたドローイングからスタートし、「絵のようなピュアなイメージを保つ彫刻はつくれないか」という模索から生まれたもの。従来の彫刻が物質的で強い存在感を放つのに対し、「そこにあるのに、ない」ようなドローイングのなかの存在感を忠実に表現している。

 本展では、等身大のマスクのレリーフと黒い透明樹脂の立方体の新作シリーズ「夜を固める」を発表。同シリーズは、闇夜から切り出したような立方体のなかでイメージを照らし出し、存在のありかと不在性をより深く問う新しい試みとなる。あわせて、作家の原点とも言えるドローイングも展示する。