EXHIBITIONS

中林忠良展 銅版画―腐蝕と光

2019.07.26 - 09.08

中林忠良 転位'16-光-Ⅰ 2016 エッチング・雁皮刷

中林忠良 Transposition-転位-Ⅲ 1979 エッチング・アクアチント・雁皮刷

中林忠良 装う地Ⅱ 2007 モノタイプ

 地域ゆかりの作家を紹介してきた茅野市美術館が、蓼科にアトリエを構える銅版画家・中林忠良の展覧会を開催する。

 中林は日本の版画界を代表する銅版画家のひとり。1937年東京都に生まれ、幼少期を疎開先の新潟で過ごした中林は、東京藝術大学在学時に現代銅版画の先駆者・駒井哲郎に師事。繊細で奥深い精神世界とその制作工程に惹きつけられて油彩画から銅版画の道へと進み、そのなかでも腐蝕銅版の技法によって、現代社会の矛盾や問題点を問うような作品で独自の世界観を築いた。

 70年代半ばには渡欧経験などを通じて転機を迎え、「すべてくちないものはない」という観念から生まれた、大地や草がモチーフの「Position」「転位」シリーズに着手。86年より茅野市・蓼科に「山のアトリエ」を構え、移ろいゆく自然の姿に心を動かされながら、近年の作品では混沌とした社会へ柔らかな光が差しこむかのような光条を作品に描き込んでいる。

 本展では、初期の油彩作品「Position」「転位」シリーズから最新作までを展示。銅版画の道具や版、カラーのモノタイプ作品とエッセイの言葉も紹介し、思想的な中林の芸術に迫る。