EXHIBITIONS

美術館まで(から)つづく道

2019.07.14 - 09.01

MATHRAX(久世祥三+坂本茉里子) うつしおみ 香料開発=稲場香織 撮影=MATHRAX

原良介 土手の上で

稲場香織 道の香りパレット 撮影=香川賢志

金箱淳一+原田智弘 音鈴 撮影=MATHRAX

アーサー・ファン 茅ヶ崎散歩記憶細胞 撮影=MATHRAX

岡本喜久司 湘南海岸(晩夏) 1984

萬鐵五郎 水浴 1921

 神奈川県内の美術館(神奈川県立近代美術館、茅ヶ崎市美術館、平塚市美術館、横須賀美術館)が関わる、2016年より立ち上がったプラットフォーム型のアートプロジェクト「MULPA(マルパ)」。多様な人々・団体とつながりながら、定住外国人や障害者の美術館へのアクセシビリティーを高めることを指針としている。

 茅ヶ崎市美術館では同プロジェクトの一環として、「道に迷いやすい」同館の立地を活用する方法をリサーチするフィールドワークを2018〜19年にかけて実施。高齢者、障害者、外国人など多様な人々を新しい物事を創り出すプロセスに巻き込みながら新たな発想力を引き出す「インクルーシブデザイン」の手法を取り入れ、複雑な美術館までの道のりを楽しんでもらえるような要素、異なる認識や価値観の手がかりをともに探った。

 本展では、フィールドワークに参加した表現者が、実際に地域を歩いた体験をもとに創作し、視覚、聴覚、触覚、嗅覚などあらゆる感覚を用いて鑑賞する新たな作品を展開。また、美術館の所蔵品の中から萬鐵五郎、小山敬三らによる同地を描いた作品も展示し、異なる時代を生きた表現者のイメージが交錯する場とする。

 そして本展を通して、障害者やマイノリティをめぐる「助ける側」「助けられる側」という二者の関係性に揺さぶりをかけるとともに、障害の有無を超えてだれもが異なる感覚を持ちながら生きる「感覚特性者」であること、ともに歩むことそのものの価値をとらえ直す機会となることを目指す。