EXHIBITIONS

加茂昂「境界線を吹き抜ける風」

2019.04.26 - 06.01

加茂昂 境界線を吹き抜ける風のためのドローイング 2019

加茂昂 超人為的な光 2018

加茂昂 風景と肖像のあいだ1 2017

加茂昂 個展「追体験の光景」(原爆の図丸木美術館、埼玉、2018)での展示風景

加茂昂 風景と肖像のあいだ7 2017

 加茂昂は1982年東京生まれ、2010年東京芸術大学美術研究科絵画専攻修了。東日本大震災発生後より、「絵画」と「生き延びる」ことを同義にとらえ、心象と事象を織り交ぜながら「私」と「社会」が相対的に立ち現われるような絵画作品を制作してきた。

 近年は、広島の原爆、熊本の水俣病事件、福島の原発といった20世紀以降の日本が抱えてきた甚大な災禍を、作品テーマのひとつに据える加茂。現地でのリサーチや滞在制作で被爆者自身の筆による原爆体験の絵を模写すること、追体験もしくは共感を通じ、ひとりの人間として、また画家として、いまもくすぶるこれらの重要な出来事と向き合っている。

 本展のテーマは「境界線」と「風」。メインとなる作品群には、福島の帰還困難地域において立入禁止エリアを示すために設置されるフェンス(境界線)を描き込んだ。このフェンスは、加茂が福島在住の友人の一時帰宅に同行した際に目にし、これまでもたびたび描いてきたもので、今回はそこに「隔離された」エリアを行き来する「風」という新しい要素を加えた。

 社会が抱える問題とその中に存在する個人、双方に目を向けながら実直な制作と問いに挑み続ける加茂の、現在地点と最新作品群に注目したい。