EXHIBITIONS

中島晴矢

麻布逍揺

2017.06.02 - 07.01

中島晴矢 《麻布逍遥》より 2017 Photo by Kei Morishita

中島晴矢 《麻布逍遥》より 2017 Photo by Kei Morishita

中島晴矢 Ark Valleys 2017 撮影協力=間庭裕基

 中島晴矢は、1989年神奈川県横浜市生まれ。法政大学文学部日本文学科を卒業、美學校では内海信彦氏、松蔭浩之氏らに師事。映像、絵画、立体やパフォーマンスなど多様な手法を用いながら、複雑で困難な現代社会を文学的な風刺を伴って作品化してきた。近年では2015年「ペネローペの境界」(TAV GALLERY)、2014年「上下・左右・いまここ」(原爆の図丸木美術館)と継続的に個展を開催。また「カオス*ラウンジ新芸術祭2016 市街劇『小名浜竜宮』」にも参加し注目を集める気鋭の若手美術家だ。

 中島はこれまでも生まれ育った郊外を舞台にプロレスを繰り広げる《バーリ・トゥード in ニュータウン》や、浦島太郎となって2016年の福島県小名浜を彷徨う《浦島現代徘徊譚》など、まちを歩く姿を通じてその土地の社会性と自身の叙情的な側面を思想の連鎖によって紡ぐ作品を制作してきた。

 そして今回の舞台となるのは東京都港区麻布。タイトルにもある「逍遥」とは散歩の意であり、近代文学の祖とも云える坪内逍遥の名でもある。落語を文学に書き換えることから始まった近代文学。自身もラッパーとして活動する中島はこうした言文一致の先に、街を私的な言葉で紡ぐHIPHOPやストリートカルチャーとの関係をも見出す。文学、政治、美術、サブカルチャーを横断する一見すると飛躍のような思考は、まさに大通りから裏路地へ、住宅街から高層ビルへと景色が移り変わる散歩のように軽やかで、そして新鮮な気づきを与えてくれるだろう。こうして“私”を突き詰めることで“公”に到る中島の作品には、常に自らの志向性をも超えた存在を許容するポジティブな曖昧さが潜む。