EXHIBITIONS

東京墓情 荒木経惟xギメ東洋美術館

荒木経惟 Tombeau Tokyo 2016 © Nobuyoshi Araki Courtesy of Taka Ishii Gallery

 日本を代表する写真家として常に第一線で活躍してきた荒木経惟は、妖艶な魅力を放つ花々や緊縛、ヌード、愛してやまない東京の街、亡き妻を思い見上げつづけた空景、そして苦楽をともにしてきた飼い猫チロ等々、さまざまな対象を被写体にしながら、独自の死生観で生を鮮烈に描き出し、唯一無二の写真世界を創出してきた。

 海外でも熱狂的な支持を集める荒木は、昨年、東洋美術専門の美術館としてヨーロッパ最大規模を誇るフランス国立ギメ東洋美術館(パリ)において大規模個展「ARAKI」を開催し、大きな話題となった。この展覧会で、50年間の作家活動を振り返るレトロスペクティブとともに発表したのが、撮り下ろしの新作「東京墓情」だ。

 大病を経験して得た濃密な「死」への意識を抱きながら、自身の写真家人生を振り返った本作は、今の荒木経惟を知るうえで大変重要な作品であるといえるだろう。本展では、同個展にて発表された「東京墓情」を日本初公開するとともに、ギメ東洋美術館所蔵の写真コレクションより、荒木自身がセレクトした幕末・明治期の写真作品を併せて出展する。加えて、本展のために撮り下ろした新作も発表される予定だ。

 70代後半を迎えてなお写真に殉じて生きる荒木経惟の、現在の境地が表されているともいえるこの最新作。19世紀後半の日本文化を今に伝える貴重な古写真とともに堪能したい。