EXHIBITIONS

寺村サチコ

橘画廊
2017.05.24 - 06.04

寺村サチコ 彼女が消える夜(上) 2015

寺村サチコ 彼女が消える夜(上) 2015

 花や海の生き物を造形上の参考にしながら、シルクオーガンジーを素材に絞り染めの技法で立体を制作する寺村サチコ。本展では、多年草イヌサフランからインスピレーションを得た新作群を発表する。寺村によると、「いのちの美しさとその裏側」「女性の花ざかり」をテーマに、表と裏、光と影が溶け合う解放感も表現されているという。

 これまでもスイートピー、レンゲソウ、ノイバラなど、さまざまな植物をイメージソースに使ってきた寺村だが、植物が花の色や形、大きさを変えて昆虫や鳥を誘い、それらを介して受粉する有性生殖に主な関心があった。しかし今回は植物の生殖の戦略だけでなく、親が球根に残した養分を使って子が育ち、花を咲かせる姿、つまり世代間の命の受け渡しにも目を向けている。

 寺村にとっての変わらないテーマは「若い女性の美と醜」であり、植物のふるまいをある程度擬人化して表現するのは従来と同様である。イヌサフランの球根がグロテスクに変貌し、身を削って花を咲かせているのだとすれば、人間の女性もシミやしわを作りながら花を咲かせようとしているのではないか。それこそ花ざかりなのではないか。そうした問題意識を造形に託している。技法は10年近く探究しているシルクの絞り染め。すべての作品は布を染めつつ形を記憶させる方法によって、平面である布を立体に変化させる。

 寺村は4月22日から6月25日まで、群馬県立近代美術館の企画展「群馬の美術2017―地域社会における現代美術の居場所」にも出展中(月曜休)。