EXHIBITIONS

平川祐樹

映画になるまで君よ高らかに歌へ

2018.06.12 - 07.28

平川祐樹 映画になるまで 君よ高らかに歌へ 2018

平川祐樹 映画になるまで 君よ高らかに歌へ 2018

平川祐樹 映画になるまで 君よ高らかに歌へ 2018

 場所や事物に宿る「時間」や「記憶」をテーマに、映像を主軸とした作品を制作する平川祐樹の個展が開催される。

 平川は1983年愛知県生まれ。2011年よりドイツを拠点に多数のアーティスト・イン・レジデンスに参加、15年には文化庁新進芸術家海外研修員としてベルリンに滞在した。主な展覧会に「眠りにつくまで」(美濃加茂市民ミュージアム、2013年)、「あいちトリエンナーレ2013」、「札幌国際芸術祭2014」、「19th DOMANI・明日展」(国立新美術館、2016年)などがある。

 アンドーギャラリーでの初個展となる本展では、17年から続く「Lost Films」シリーズの第3作となる映像作品《映画になるまで 君よ高らかに歌へ》を発表。壁に投影された黒い背景に、古い日本映画のタイトルと製作年が淡々と現れては消え、タイトルを朗読する男性の声が低く会場に響く。使われた映画はかつて一般公開された日本映画で、雑誌やポスターなどに記録はあるものの、保存に対する認識の薄さ、関東大震災や世界大戦の空襲による焼失などのために実際のフィルムは残っていない。

 平川は制作の過程で、失われた日本映画のリストを眺め、いくつかの映画タイトルがリストの中でつながり、ひとつの言葉の流れを構成していることに気がついたと言う。それらのタイトルを抽出し並べ替えていくことで、断片的ではあるものの、詩と呼べるようなものが完成した。

 輝かしい映画史の背後で失われてきた日本映画の「声」をのせた《映画になるまで 君よ高らかに歌へ》は、張り巡らされた歴史の糸を絡め取り、黒い光としてスクリーンに投影され、失われた何千という映画の魂を呼び起こすだろう。