EXHIBITIONS

上野裕二郎「Phenomenon and Phantasms —現象と魔ー」

MU GALLERY
2024.12.07 - 12.21

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 MU GALLERYで、上野裕二郎による個展「Phenomenon and Phantasms —現象と魔ー」が開催されている。

 上野裕二郎は1996年京都府生まれ。2019年に沖縄県立芸術大学美術工芸学部絵画専攻を卒業し、2021年に東京藝術大学大学院美術研究科芸術学専攻美術教育研究室修士課程を修了している。

 以下、アーティストステートメントとなる。

「本展では、外界で生じる自然現象と人間の内面に生じる心理的現象を主題とし、『現象』と『魔』の対比を通じて、画家としての新たな表現を模索しました。

 私が『魔』の生き物を描こうと思った理由は、これまで龍や鳳凰などの縁起の良い生き物を多く描いてきたなかで、陰陽が表裏一体であるように、あえて『魔』にも踏み込まなければ、画家として本質的なものには迫れないのではないかと考えたためです。しかし、私にとっての『魔』は、決して醜さや不浄さを表すものではなく、人間の内面に渦巻く、不可解でありながら魅惑的な力です。

 今回は、その『魔』に対応させるかたちで、外界で実際に発生する自然現象を描き、内と外の現象が交差するような展覧会を目指しました。

 まず、陰陽五行説における『木火土金水』といった自然界の要素は、木=風、火=炎というようにそれぞれが自然現象とも対応しています。F130号の連作では、龍や鳳凰などを自然現象のメタファーとして描いています。古来、龍や鳳凰といった想像上の動物は、例えば龍は水や風、鳳凰は炎や太陽といった自然現象のシンボルとしての役割も担ってきました。

 いっぽう、ヤマタノオロチやヌエといった、しばしば英雄に退治される『魔』の存在は、人間が混沌(カオス)を秩序(ロゴス)に置き換えようとする試みを象徴しています。

 龍や鳳凰が生物のもっとも優れた要素を集約し、畏敬の対象とされてきたいっぽう、これらの魔物は混沌の体現であり、言い換えれば物質世界や精神世界における未整理なエネルギーの表象です。過去の画家たちがこうした存在を描くことは、外界に潜む不可視の存在に形を与えることであると同時に、内面的な名状しがたい混沌を映し出す行為だったと思います。これらの魔物は、実在しないが故に、より一層その象徴性を持ち、エネルギーの集約点となりうるのではないでしょうか。

 本展覧会では、自然現象と心理的現象という一見相反する主題を取り扱いながら、それらが絵画を通じて呼応しあうことを目指しています」(展覧会ウェブサイトより)。