藤原敦 写真展「櫻川」

　禅フォトギャラリーで、藤原敦による写真展「櫻川」が開催されている。

　藤原敦は1963年滋賀県生まれ。2008年から2012年まで、写真編集者・長谷川明の編集による写真誌『ASPHALT（アスファルト）』主催し、Vol.1から10まで刊行。2013年からは定期的に自身の写真集を発表し、国内外で個展を開催するなど精力的に活動してきた。主な写真集に『南国頌』（蒼穹舎、2013）、『蝶の見た夢』（蒼穹舎、2014）、『詩人の島』（蒼穹舎、2015）、『蟬丸』（蒼穹舎、2017）、『2200 Miles』（蒼穹舎、2019）などがある。

　本展では、新刊写真集『櫻川』の刊行を記念し、写真集より選りすぐりのカラー写真作品約20点を展示。

「2020年コロナ禍の夏、北関東のとあるホテルに住み込むことになった。
　そのホテルの横には櫻川という川が流れていた。

　未だ見もせぬ常陸の国に名も櫻川ありと聞きて

　― 紀貫之 能謡曲『櫻川』より」（藤原敦、展覧会ウェブサイトより）。

「コロナ禍に世界中が直面していたあの頃。たまたま桜川の近くに長期滞在することになった藤原は、直感のままに川の撮影を始めた。ある時、藤原はこの地が能の『桜川』の舞台であることを知る。『蝉丸』で既に能の世界に自作との通路を見出していた藤原は、その偶然を糸口に作品の全体像を構想していく。能の『桜川』の物語が、カメラを手にした藤原の視線に影響していったのは間違いないだろう。

（中略）

　聖なるものと俗なるものとが入り交じるこの世界は、桜が散るようにつねならぬものである。だからこそ写真に留める価値がある。『櫻川』が能の世界と通じるのは、そうした作者の無常観である」（タカザワケンジ『現実と虚構を行き来する川のほとりで』より抜粋、展覧会ウェブサイトより）。