EXHIBITIONS

ジュリアン・クリンスウィックス「Solo Tumult」

MARC JACOBS EVENT SPACE 渋谷パルコ3F
2023.11.11 - 11.26
 渋谷パルコ3Fに期間限定オープンするMARC JACOBS EVENT SPACEで、ジュリアン・クリンスウィックス個展「Solo Tumult」が開催される。

 クリンスウィックス(1995〜)はカリフォルニアを拠点に、写真やビデオ、音楽、テキスト、ファッションなど多様な表現形態を用いて唯一無二のヴィジョンを表現・探求するアーティストだ。クリンスウィックスはパーソナルであると同時に、シンボリックでポップな言語で現代社会を語る作品を制作している。2015年、ロシアのファッションブランドのビデオを撮影したのを皮切りに、トップクリエイターやブランドと数々の協働を行っている。

 MVやファッションキャンペーンといったコマーシャルな分野で特異な地位を確立するいっぽう、短篇映画の監督や実験的なドキュメンタリーの制作、もしくは作曲を行っている。18〜19年にはグラミー賞を受賞したドキュメンタリー『Homecoming』でビヨンセやParkwood Entertainmentと協働し、活動休止からコーチェラのヘッドライナーを務めるまでのビヨンセの姿を映像作家/映像編集者/ミュージシャンとして表現した。10代で始めたスケートボードとの関わりも深く、22年にはストリートとポピュラーカルチャーにおいて最も影響力のある人物リスト「Hypebeast100」に選出された。

 近年では、パーソナルワークの制作に積極的に取り組んでおり、現代アメリカの象徴として高速道路を走るポップな色合いのセミトレーラーに焦点を当てた写真連作「BOYS GROWN TALL」(2019)はその後、深夜に走行するセミトレーラーを撮影した「NACHTWAGEN(Night Trucks)」(2022)へ続き、継続的なシリーズに発展している。

 本展では、最新作《Solo Tumult》を展示する。コマーシャルの撮影でオアフ島にある世界有数のサーフスポット、ワイメア湾を訪れたクリンスウィックスは偶然、その年最大のビッグウェーブの到来を目撃し、夢中でシャッターを切り続けた。自然と人間、静寂と動感、精神と身体。そうした相反する要素をとらえた《Solo Tumult》には、混沌のなかで調和を探そうとする人間の姿が寓話的に現れている。それは、めまぐるしい速度で回るコマーシャル空間における作家自身のステータスを示唆するものであると同時に、慌ただしい現代に暮らすわれわれの肖像でもある。