EXHIBITIONS

小笠原美環「Himmel」

2023.10.05 - 11.05

小笠原美環 Himmel 2022年 ©︎Miwa Ogasawara/ MAHO KUBOTA GALLERY

 MAHO KUBOTA GALLERYで小笠原美環の個展「Himmel」が開催されている。

 小笠原は京都生まれ。10代の頃に日本を離れてアメリカで暮らし、その後ドイツに定住した。ハンブルク芸術大学でノベルト・シュワンコウスキーやヴェルナー・ブットナーに師事し、絵画を学ぶ。ハンブルクにスタジオを構え、グレーを基調としたモノトーンの油彩を用いて日常の日常の静謐な光景を表現している。小笠原の作品は具象絵画の形態を持ちつつ、意識の流れや哲学的な概念などを光や建築空間、ガラスの質感、自然のうつろいなどの仮のかたちに変換して表現されている。

 小笠原の作品はポンピドゥーセンター(フランス)、ドイツ連邦共和国現代美術コレクション、アラリオ美術館(韓国)、Yu-Hsiu美術館(台湾)など、各国の美術館で収蔵されており、本年はYu-Hsiu美術館の個展に加え、恩師である故・ノベルト・シュワンコウスキーとの2人展、アルブレヒト・シェーファーとの対話形式の2人展がそれぞれキールとベルリンで開催されている。

 本展では、「Himmel(天空または天国を意味するドイツ語)」と名付けられた7点の連作を中心に新作を展示する。昨年、大きな喪失を経験した小笠原は、それを契機に毎日空を見上げるようになったという。この展覧会では、空という無限な広がりに人々が何を求め、何を見出すのかに焦点を当てる。カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ、ウィリアム・ターナー、クロード・モネ、ゲルハルト・リヒターなど、絵画の巨匠たちが描いた空の傑作への敬意を胸に、小笠原自身もこの壮大なテーマに真摯に向き合うことを決意した。

 完成された7点の大型キャンバス作品では、夜明けの空、雲の隙間から差し込む光、虹のかかった空、穏やかで静かな空、夕暮れ前の空など、異なる季節や時間帯の空が表現されており、これらを一組の作品として並べた光景は、まるでクラシック音楽の交響曲の複雑な旋律がもつような豊かで広がりのある世界を感じさせる。