EXHIBITIONS

若林奮 森のはずれ

所有・雰囲気・振動—森のはずれ 1981-84 鉄、鉛、紙、木 257.0×414.8×506.3cm(部屋状部分のサイズ) 武蔵野美術大学 美術館・図書館所蔵
インスタレーション(5th)「ISAMU WAKABAYASHI sculptures and drawings」ソウル・アーツ・センター(1991) 撮影=山本糾

 武蔵野美術大学美術館・図書館で「若林奮 森のはずれ」が開催される。

 若林奮は1936年生まれ。東京藝術大学美術学部彫刻学科を卒業後、75年より武蔵野美術大学で教鞭をとった。鉄を主な素材とし、緻密な観察と省察にもとづく彫刻観、自身と周縁世界との関わりをめぐる思索を内包した作品により、戦後日本の現代彫刻を牽引してきた作家だ。

 81年には学内にある工房内に鉄板をたて、自らのために10畳ほどの空間を制作。その後、「鉄の部屋」という通称を持つようになったこのスペースの周囲を鉛で覆い、周辺に植物や大気を表す鉛の板やキューブを配置して《所有・雰囲気・振動―森のはずれ》(1981〜84)として発表。自分自身が所有できる空間を区切ることで生まれた境界や領域をめぐり、自身を軸とした周縁、自然への思索を一層深めていった本作は、若林本人を含んだ自然や風景そのものの具現化を試みた作品といえるだろう。

 本展では、若林が彫刻観を拡張させるきっかけとなった極めて重要なこの作品を、約30年ぶりに展示。この作品のほか、90年代の代表作《Daisy I》全10点をはじめとする大型彫刻や若林の夥しい思索の一端が見えるドローイングや小品、資料約100点も鑑賞できるという。

「自分が自然の一部であることを確実に知りたいと考えていた」という若林は、世界をどのように知覚し、そこで見出した概念をいかに彫刻化したのか。その一端に触れる展覧会となる。