EXHIBITIONS

池田学

The Pen ー凝縮の宇宙ー

2017.04.08 - 07.09

池田学 予兆 2008 株式会社サステイナブル・インベスター(神楽サロン)蔵 撮影=久家靖秀

池田学 巌ノ王 1998 おぶせミュージアム・中島千波館蔵

 1ミリにも満たないペン先を自在に操り、細密かつ壮大な世界を描き出す池田学。国内外から集まるこれまでの作品ほぼ全点を通して1990年代から現在までの池田の画業を網羅的に見る、大規模な個展が開催される。

 その描写の緻密さゆえ、作家が1日に描き進めることのできる作品面積は10センチ四方ほど。2011年にニューヨークで開催されたグループ展「Bye Bye Kitty!!!」参加時には「魔法のよう」とも評された作品は、サイズによっては1年以上もの歳月をかけて制作される。日本の歴史をテーマとした《興亡史》は、画面の中に広がる豊かな空間性と、細やかな描写が際立つ作品の一つだ。本作には、ロッククライミングから着想を得たという多彩な形状の城、桜、そして人々の姿などが縦横無尽に積み重なり、1枚の絵に過去から現在までの複数のタイムラインが共存。その中には、制作過程に生じた作家の身の回りの出来事も描かれている。

 一方、《山と雲》や《Bait》をはじめ、深い森、水の中など、リアリティーのある自然描写も池田の作品にしばしば見られる特徴だ。これらの原風景には、本展の開催地で、池田の出身地でもある佐賀の自然の中で木々の間を歩き、川を流れる石の下に魚を発見するといった、作家が幼少期に体験した自然との邂逅があるという。池田の作品には、人生の記憶、日常、異国への旅など、様々な経験が色濃く反映されている。

 本展では、アメリカのチェゼン美術館にて2013年より3 年にわたって滞在制作を行い、完成させた自身最大規模となる新作《誕生》も発表。人々が自然災害とどのように共存していくべきか、そして、どのようにその被害から立ち直っていくのかをテーマに、縦3×横4mの巨大なパネルに描かれた本作が日本初公開となる。こうした作品に加え、スケッチや制作の映像記録なども展示される本展で、作品の世界観を形づくる細部と全体をじっくり味わってほしい。