EXHIBITIONS

赤羽史亮、小泉圭理、松尾勘太 「口肛具譚」

2023.01.14 - 02.12

赤羽史亮 Soil Eater 2021
Photo by Takaaki Akaishi © Fumiaki Akahane Courtesy of CAVE-AYUMIGALLERY

小泉圭理 Livers#168 2022

松尾勘太 舞台装置の夢 2022

 TALION GALLERYでは、赤羽史亮、小泉圭理、松尾勘太による展覧会「口肛具譚」が開催されている。

 微小な生物や菌糸がうごめくように、生々しく絵具を隆起させた有機的なマチエールの絵画作品で知られる赤羽史亮。「世界は巨大な堆肥だ」という赤羽にとって、絵画平面は価値が反転する場所であり、外側と内側が裏返った人体でもあるという。多様多様な筆触の連なりが這い回るその制作の過程によって生まれるのは、あらゆる生命の起点と終点が連鎖する根元的な矛盾の肯定といえる。

 小泉圭理は、画布が木枠に貼られ、そこに絵筆と絵具が突き立てられる現実を、皮膚が骨にまとわりつくこと、また事物の交接のメタファーとして扱い、絵画の成り立ちを繰り返し咀嚼しながら制作してきた。棒切れの組み合わせや板のくり抜きから始まる小泉のシェイプドキャンバスの作品群は、人間的な生気を収容するための器か、あるいは身体そのものとして表現されている。

 一貫して油彩と矩形のタブローを用いて、松尾勘太は具象による時空間を描き続けている。松尾が描く舞台設定のように限定された空間の拡がりと、そこで量感を伴いながら鈍く光る体躯や生命は、筆触による線描的な彫塑と触覚的な流動との結合による、視覚的欲望のレンダリングといえる。その絵画は、見る者の網膜に瞬間的に現れずに、遅延して感覚や記憶に現れる持続的なスクリーンのように作用する。

 本展は、物質の集合である人体と絵画がともに、物資以上のものとして見なされる契機のひとつとして、「前」と「後ろ」が区別されうることに着目する。