EXHIBITIONS

アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真

平井輝七 風 1938 東京都写真美術館蔵

 東京都写真美術館では、展覧会「アヴァンガルド勃興 近代日本の前衛写真」を開催中。近代日本で展開された写真の潮流に注目する。

 近代日本写真史における前衛写真は、海外から伝わってきたシュルレアリスムや抽象美術の影響を受け、1930年代から1940年代までのあいだに全国各地のアマチュア団体を中心に勃興した。活発に作品が発表された時期が短命だったことから、いままで活動内容についての検証があまりなされてこなかったが、近年、各地の美術館により研究が進み、海外の展覧会でも作品が注目される機会が増えている。

 それまでも写真にとって絵画の影響は強いものだったが、前衛写真は画家だけではなく詩人やデザイナーなどが参加し、その活動の幅を広げていったことが特徴のひとつ。とくに1937年に「海外超現実主義作品展」が開催されたことによって、多くの写真家が触発され新しい表現へ向かい、画家たちは写真を使って、絵画ではできない表現に挑戦した。しかし、次第に戦時下体制の強化とともに各地で行われていた活動は収束へと追い込まれた。

 本展では、1930年代から1940年代のあいだに制作されたものの、戦争の陰に隠れた作品群を展覧。自由に表現できる大切さと、写真で表現できることの幅広さを実感できる機会となるだろう。

 出展作家は、平井輝七、小石清、後藤敬一郎、山本悍右、ソシエテ・イルフ、瑛九、永田一脩、ウジェーヌ・アジェ、マン・レイほか多数。