EXHIBITIONS

開発好明 個展「開発再考 Vol.2,3」

2022.07.16 - 08.06

開発好明 ライトカー 2006
Kunstherbst Berlin 06(Mercedes-Benz showroom、ベルリン、2006)での展示風景
© Yoshiaki Kaihatsu Courtesy of ANOMALY

開発好明 自然を導く - ベニス日本館 再生プロジェクト 2008
トウキョウ・ミルキーウェイ 2008(SPICA art、東京、2008)での展示風景
© Yoshiaki Kaihatsu Courtesy of ANOMALY

開発好明 147801シリーズ 2019
「ちょうこくの森アートライヴ2019 『あれこれ開発工場 ピカソ工場』」(彫刻の森美術館、神奈川、2019)
©︎ Yoshiaki Kaihatsu Courtesy of ANOMALY

 ANOMALYでは、開発好明の個展「開発再考 Vol.2,3」を開催する。

 開発好明は1966年生まれ。93年に多摩美術大学大学院美術研究科修士課程を修了。80年代より積極的に作品の発表を続け、ニューヨークやベルリンでの滞在制作、海外の展覧会にも数多く参加。2004年にはヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館の作家に選出され、代表作のひとつでもある発泡シリーズを発表し注目された。また越後妻有 大地の芸術祭(新潟)やいちはらアート×ミックス(千葉)など芸術祭にも長年参加しており、多くの鑑賞者を取り込むユーモラスな作品で知られる。

「開発再考」は、多様なアプローチで膨大な作品をつくり続けてきた開発の作品ジャンルにフォーカスを当て紹介していくシリーズ。本展は、2019年にANOMALYで開催された90年代の活動初期のビデオ作品群を展示し作家の核心に迫った「開発再考 Vol.1」の続編となる。

 今回、Vol.2は大学の卒業制作で発表した作品から最新作に至るまでを網羅し、照明として使用した蛍光灯が、のちに積極的な作品の一部として機能する作品に変容していく様子を紹介。初期作品の《ライトカー》(2006)、ロシアとウクライナの戦争を題材にした新作を含め、合わせて約20点の大スケールで展開される。また、Vol.3として2008年に行った展示を再現。開発が2004年の第9回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展に参加した際、展示のために改装を繰り返してきた日本館(設計:吉阪隆正)を見て、現状復帰を願うプロジェクトとして建築本来の機能美を取り入れた自らの作品を提案、関係者のインタビュー映像とともに展示したものだ。

 白く輝く廃材の発泡スチロールでできた茶室、1年遅れで手紙が届く「未来郵便局」など、ウィットに富み洗練された作品、鑑賞者参加型のワークショップ、時にモグラ(*)やパンダなどのゆるいオリジナルキャラクターに扮して活動する開発。その表現が自然体で開かれているがゆえに、私たちはともすれば無防備のまま向き合い、鑑賞する過程で作家が日々心を留める社会に対する疑問や自分の持つ固定観念に対面することになる。

 本展に際して、開発は以下のコメントを出している。

「海外滞在を機に、作家としての開発から日本人としての開発を問われる機会が増えました。初期から言葉やイメージに2つの意味を混在する手法を扱ってきましたが、留学を経験したことでより顕著になったように思います。

今回は、戦争をテーマにいくつか新作を加えています。ピカソがゲルニカを作ったように、世界が直面している戦争について今しかできない感覚を提示し、後世に残す意味とは何かを考え『マリウポリ』というタイトルの作品を制作しました。絡み合うコード、混ざり合う色は濁り、作品は決して美しい物として仕上がっていません。決めた色を蛍光灯使って混ぜるというルールよって制作しているため、色のコントロールは作家にはできずに出来上がった色が画面全体に広がっています。混沌とした世界を制御できない現状を顕在化し、鑑賞者それぞれの方が想い、考えられるような作品になればと思います(開発好明)」。

*──作家がモグラに扮し、地下の特設スタジオで多様なゲストを招いたトーク番組型の作品 《モグラTV》を展開するほか、様々な場所に出没してワークショップなどを行う。