EXHIBITIONS

岡本信治郎

2022.07.02 - 08.10

岡本信治郎 ゼロ戦 1984

岡本信治郎 ころがる小錦 1995

 東京画廊+BTAPでは、画家・岡本信治郎(1933〜2020)の個展を開催する。

 岡本は都立日本橋高等学佼を卒業後、独学で水彩画を始め、1960年代に、簡潔な線描とアクリル絵具の明るい色彩を用いた画風を確立した。1962年および翌年のシェル美術賞展で佳作、1964年に第1回長岡現代美術館賞展で大賞。以降、東京ビエンナーレ、現代日本美術展など国内外の展覧会に出品した。近年では、ポップ・アートを世界的な文脈で紹介する「International Pop」展(ウォーカーアートセンター、ダラス美術館、フィラデルフィア美術館を巡回)で作品が紹介されるなど、戦後日本の一傾向を示す美術家として、国際的な評価が高まっている。また制作の傍ら、凸版印刷株式会社のアート・ディレクターとして勤務、81年までデザインの分野で活躍した。

 岡本は長いキャリアにおいて、異なるスタイルによる多くのシリーズを展開し、下町の大衆文化から美術、宗教、歴史など多岐にわたる主題を扱った。その作品は綿密なスケッチをもとに生み出され、感情を排した筆遣いによる形象が賑やかに画面に配置されている。

 リトグラフやシルクスクリーン、立体絵画、オブジェと、同一のイメージで異なる色・サイズのバリエーションを見せるのが岡本の「おかしんワールド」の真骨頂であり、展示スペースを圧巻のスペクタクルへと転じさせる。明るい祝祭的な画面空間は観客を楽しませながら、迎合しない、台風の目のような静けさもある。

 本展では、岡本が1980年以降に発表した作品を展示。喜劇王チャップリンの初来日を題材にした《チャップリンの来日》(1984)、ブリキの玩具をモチーフにした《サーカスプレーン》(1983)、そして幼少期の戦闘機への興味に発する《ゼロ戦》(1984)など、日本の国威発揚の真っ只中で成長した少年の原風景が、独自の表現言語によって表現される。そのいっぽうで、岡本の作品に現れるユーモアは社会批評に根ざしており、大衆性が映し出される賑やかなイメージも客観的で鋭敏な視線を感じさせる。