EXHIBITIONS

後藤夢乃 個展「Nos sumus luna, Vmbra luceat」

2022.06.26 - 07.10

後藤夢乃個展「Nos sumus luna, Vmbra luceat(私たちは月、光を放つための影)」メインビジュアル

後藤夢乃 棘マリアⅨ

後藤夢乃 Black MariaⅩⅩⅣ

後藤夢乃 Ritual-luna decrescent

 biscuit galleryで、新進気鋭のアーティスト・後藤夢乃の個展「Nos sumus luna, Vmbra luceat(私たちは月、光を放つための影)」が開催される。ギャラリーの3フロアを使った⼤規模な個展となる。

 後藤は2019年に⼥⼦美術⼤学を卒業後、22年に東京藝術⼤学⼤学院美術研究科修⼠課程油画専攻第⼀研究室を修了。これまで、弾圧されながらも負の感情に争い戦い続ける、罪なき⼈々に光を当てる絵画作品を制作してきた。

 後藤の作品では宗教的で幻想的な世界が展開されるが、それは「逃避としての幻想的世界」ではなく、作家は作品を通して「⼈の痛さ、守ろうとしているもの、強さを感じてもらえたら嬉しい」と語っている。また物質感にこだわる後藤の作品は、平⾯作品でありながら深い奥⾏きと重厚感を持つ。時には実際に釘をキャンバスに刺した作品も⾒られ、そのアイデアと⼿法は独特だ。

 本展のテーマは「娼性」。ギャラリーの1階から3階に上がるにつれ、絵画に描かれた女性たちは衣を脱いでいき、やがて、⽣と死と復活の儀礼を再解釈するような展開になるという。後藤は、古代では娼婦が巫⼥として神聖視されたこと、⽇本でもかつて歩き巫⼥と呼ばれる女性たちがいたことなどにふれ、以下のステイトメント(一部抜粋)を出している。

「展覧会のタイトルに、『私たちは⽉、光を放つための影』とあります。

⽉は⼥性性、太陽は男性性を象徴し、陰と陽を表しています。

⽉は太陽の光がないと地球では⾒えないけれど、⽉がないと海は産まれない。潮の満ち引きが⽣まれない。

世界は光と影、善と悪、天と地、⽣と死などの⼆極で語られることが多いですが、この境界を跨ぎ越えていくこと、曖昧にしていくこと、⽩と⿊を混ざり合わせることこそが世界に調和をもたらすと考えています。

絵画⾃体も幻想的な世界を描きながら、鑑賞者を『あちら側』の世界に誘うのではなく、絵画が『こちら側』の世界へ来ようとしていることを意識して制作しているため、凹凸のある物質感の強さや、地⾯を描き⾜場を作ることで私たちのいる今この世界とつながっていることを表しています。

私がこの世界に⽴って絵を描いていることの姿勢です。
光らない存在、闇を照らすことで影の輪郭を朧げに⽴ち上がらせる、
⽇陰にいるものたちに光を当て、同じように抑圧を抱えている⼈たちの浄化を起こすことが今展の⽬的です(後藤夢乃)」。