ARTISTS

フェリックス・ゴンザレス=トレス

Felix Gonzalez-Torres

 フェリックス・ゴンザレス=トレスは1957年キューバ・グアイマロ生まれ。公共の場に個人史を持ち込み、身近な問題に対する気づきをもたらす作品で知られる。ニューヨークのプラット・インスティチュート、ホイットニー美術館のインディペンデント・スタディー・プログラムで社会の諸問題を芸術に組み込むポストモダンの理論を学んだ後、87年より前衛集団「グループ・マテリアル」に参加。中心メンバーであるダグ・アッシュフォード、ジュリー・オルト、ティム・ロリンズらとともに、様々なアーティストとコラボレーションし、展覧会を通じてジェンダーや政治問題などに関するメッセージを投げかけた。

 アンドレア・ローゼン・ギャラリーでの初個展で単独活動を開始。長方形の紙を積み上げ、その紙を来場者が持ち帰ることを許可し、見る側が介入することで変化が起きるインスタレーション《無題(ブルー・ミラー)》(1990)によって評価される。翌年、パートナーのロス・レインコックがエイズで他界。制作においても転機となり、恋人たちの痕跡が残るベッドの写真をニューヨーク街の24ヶ所の看板に設置した野外作品《無題》(1991)、自身と恋人レインコックの2人分の体重と同等のキャンディーを床に敷き詰め、観客に持ち帰ることを許可するインスタレーション《無題(偽薬)》(1991)など代表作を発表する。95年、グッゲンハイム美術館で大規模回顧展を開催。その翌年、エイズにより死去。日本では、ファーレ立川で、「永遠の時の流れ」をテーマに飛行する鳥の写真を拡大した看板作品《ただそれだけの景色》を見ることができる。