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なぜいま「セル画」なのか。セル画のNFTマーケットプレイス「楽座」代表・甲斐義和が見据える「アートとしてのセル画」

日本アニメのセル画に特化したRAKUICHI株式会社によるNFTマーケットプレイス「楽座(RAKUZA MARKET PLACE)」。2021年夏にオープンしたこのマーケットプレイスは「セル画をアートに」という目標を掲げ、セル画のフィジカルアセット型NFTの販売のみならず、セル画の制作技術を持つ仕上げ会社の協力のもと、セル画の保存や修繕の研究を行なっている。なぜ、現代においてこのセル画に着目し、その美術的価値をマーケットのなかで高めようとしているのか。代表を務める甲斐義和に話を聞いた。(PR)

甲斐義和

 日本のアニメのセル画に特化したRAKUICHI株式会社によるNFTマーケットプレイス「楽座(RAKUZA MARKET PLACE)」。このマーケットプレイスは「セル画をアートに」という目標を掲げ、NFTによるセル画販売を実施。ほかにも「楽座」は有楽町マルイ7階で、実物のセル画・原画を展示する「楽座NFTマーケットプレイス・ギャラリーラボTOKYO」 の運営も行なっている。さらに、2022年末からはセル画の制作技術を持つ仕上げ会社の協力のもと、セル画の保存や修繕の研究を行なっている。

 デジタル化にともない、アニメ制作の現場から消えていったセル画だが、「楽座」はなぜ、現代においてこのセル画に着目し、その美術的価値をマーケットのなかで高めようとしているのか。代表を務める甲斐義和に話を聞いた。

楽座(RAKUZA MARKET PLACE)

──なぜ「セル画」という特殊なジャンルをメインとした事業を立ち上げようとしたのでしょうか。

  中学3年生のころ、アニメに興味を持ちました。当時、夢中になったのが『けいおん!』という、女子校の軽音楽部を舞台としたアニメで、その影響で音楽も始めました。本格的に音楽活動を続けながら、将来はスタジオミュージシャンとして生計を立てることも考えていましたが、自分の好きな音楽を仕事にしようとする過程で、もしかしたら好きなことが嫌いになってしまいそうな経験があり、まずは自分で自立するための事業を始めることを決意しました。

 私は中学時代に親が離婚していて、さらにその時期に弟も生まれました。高校は学費が全額免除される特待枠で通えるように必死に勉強しましたし、親の助けになるためにも、早く独立して自分の力でお金を稼げるようになりたいとつねに思っていました。だから、どんなかたちであれ、自分の力で事業をやりたいという思いが強かったです。

 最初は、地元の大分県で中古買取の出張サービスを2016年に起業しました。中古市場が盛り上がり始めたタイミングで、事業も軌道に乗り、またNFTや仮想通貨も大きな注目を集める流れで資産を増やしました。そうした時期に「セル画」と運命的な出会いを果たします。セル画は、アニメ制作のデジタル化以前の90年代ごろまでは多くのアニメ制作の現場でつくられていたものですが、現在新たに制作されることはなくなりました。しかし、セル画の中古市場は大きく盛り上がっており、海外のアニメ好きからも強く支持されていたのです。アニメが好きというのが自分の原点でもあったので、仕事の仲間とともにいまのNFTや仮想通貨の技術や市場を活かすことで、セル画の文化を盛り上げることができないかと考えたのが「楽座」のスタートのきっかけです。

RAKUICHI株式会社代表取締役・甲斐義和

──セル画を保存管理してNFTとして販売するだけでなく、セル画を文化ととらえて事業を行っているのですね。

 私はアニメ業界出身でありませんが、セル画について知れば知るほど美術や金融との関連性を強く感じました。かなりの枚数のセル画が存在しており、二次流通を通して値段が引き上げられるという美術にも似た構造がありました。

 ただ、そういった金融的な意味ももちろんなのですが、本物のセル画を見たときの、人の手で塗られた彩色の厚みや、透明のセルにキャラクターが乗っていることの美しさは、当時をリアルタイムで知らない自分にとっては大きな感動がありました。この技術を国外に流出させたくない、価値がわかる人に手にとってもらい、所有してほしいという思いが強くなったのです。

楽座NFTマーケットプレイス・ギャラリーラボTOKYOでの展示風景より

──「楽座」が保管しているセル画をNFTで販売するという仕組みについて、詳しく教えてもらえますか?

 セル画は非常に劣化しやすく、現在も多くのセル画が失われていっているのは事実です。本来は、太陽光や熱などを避け、1年を通して空調を管理しなければならないのですがいけないのですが、個人コレクターが家の中にしまい込んでしまったまま、ただ劣化していくことも多いのです。

 適切な保管をすることでセル画の寿命を伸ばすことができるので、弊社が保管をしながら、その所有権をNFTとして販売することで、セル画という文化を後世に伝えながら、利益を生み出すことができます。実物が存在し、ギャラリーで確認できるということも、所有権のホルダーにとっては安心感があるようです。

 さらにこうしたNFTの利益の一部を、アニメの制作会社に還元できる仕組みを構築しています。これまではセル画の多くが様々な過程で制作会社から流出したうえで二次流通市場に乗っていたため、そこで生み出される利益が制作会社に還元されることはありませんでした。しかし、NFTはブロックチェーン上に取引情報がつねに記録されるので、取引のたびに制作会社に利益をもたらすことも可能です。こうした仕組みが、現在問題視されている、アニメ制作会社の利益の少なさの解決策になればと考えています。

──保管という観点からセル画の未来を考えてもいるのですね。アニメ業界からの反応はどのようなものでしょうか。

 創業初期は大量にセル画を所有している業者から仕入れていたのですが、事業を続けていくなかで、多方面から声がかかるようになり、最近は当時からセル画の価値を理解し保管していたアニメ関係者などから仕入れています。セル画をいまも保管しているアニメ制作会社もたくさんあり、保存に協力してほしいという声もかかるようになってきました。

 『キャプテン翼』『AKIRA』『新世紀エヴァンゲリオン』といった、国外でも高い人気を誇る作品のセル画はすでに海外にまとまって渡ってしまったものも少なくないですが、将来的にはこうしたセル画も日本に戻して、適切な環境で保管したいと考えています。

「楽座」が保有する『魔女の宅急便』の「ウルスラの絵」の背景原画及びハーモニーセル画

──市場の原理を利用しながら、セル画に価値を与えていく試みといえますね。

 かつての浮世絵と現在のセル画は、同じような状況にあるように思います。江戸時代の浮世絵は大衆芸術で、大量に印刷されていた普遍的なものでした。それらが輸出されることで、特別な価値が見出され、欧米のコレクターやバイヤーによってその価値が保たれてきました。

 セル画も、最初はアニメ好きの物々交換などで細々とやり取りされていたものを、海外のバイヤーが目をつけ、取引されるようになったわけです。新型コロナウイルスのパンデミック以前は、多くのバイヤーが日本を訪れ、有名な作品のセル画が国外に流れていったのが現状です。新型コロナウイルスによって流出が一時的に落ち着いたタイミングで事業を始められたのは、幸運でもありました。

──実物のセル画の見たうえで購入できる場所として、有楽町マルイにもリアルスペースも構えているわけですね。

 私たちはセル画がどういったものなのかを世界に向けて発信したいと思っています。NFTなのでもちろんオンライン販売がメインですが、同時にセル画を知らない人に実物を見てもらい、現物を前に説明を行い、かつてのアニメのつくり方を知ってもらえる場をつくりたいと思いました。

楽座NFTマーケットプレイス・ギャラリーラボTOKYO

──今後、「楽座」ではどういったチャレンジをしていく予定ですか?

 セル画の国内マーケットは少しずつ大きくなってきていますが、まだまだ一般層への認知が進んでいないのが現状です。まずは、セル画がどういうものなのか、どのような価値があるのかをしっかり訴求していく必要があると考えています。マーケットとして回すことはできていますが、いままでのアニメ業界を尊重しつつ、次の世代へとつながる新たな土台をつくるためにやるべき課題が見えてきたところです。

 大事なのはアニメという日本の文化をリスペクトすること。今後はセル画制作の作業風景を記録し、自分たちなりのやり方でセル画の素晴らしさ、そしてアニメーターの表現力を伝えるコンテンツづくりをしていきたいと考えています。

楽座NFTマーケットプレイス・ギャラリーラボTOKYO

編集部

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