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ビジネスリーダーたちのアートコレクション:黄皓×ジェレミー ビジネスと対局にあるものの価値

自身もコレクターであるコバヤシマヒロが、コレクション資産の管理サービス「COLLET」でアート作品を管理し、ビジネスの世界で活躍するコレクターを取材。今回はフィットネス事業を手がける黄皓と、不動産開発やコンサルティング業務を行うジェレミーに話を聞いた。

聞き手=コバヤシマヒロ 構成=編集部

黄皓の自宅にて。左から黄皓、ジェレミー、友沢こたお作品とともに

──まずは、おふたりの自己紹介と、アートに興味を持ったきっかけを教えてもらえますか?

黄皓(こうこう) 現在は、ミラーフィットというフィットネス系の会社を経営しています。アートについては『バチェロレッテ・ジャパン』という恋愛リアリティ番組に参加したときにアーティストの杉田陽平くんと出会い、興味を持ち始めました。

 2年半ほど前に、その杉田くんとアートオークションに行くことになって。僕自身は家が好きで、インテリアも好きだったので、自宅に飾る絵を購入したかったんですが、どう選んでいいかわからなかったんです。インテリアは引っ越しをしたら価値が揺らぐ気がしますが、絵はどこにあっても価値が残り続けるという話を聞いて、おもしろそうだなと。

 結局、オークションではテンションが高まって、オートモアイさんの作品を競った末に落札しました。「絶対勝つぞ」といった気持ちが生まれてしまったんですね。その瞬間からなんですけど、基本的にアートを直感で買うようになり、いまでは30点ほどをコレクションすることになりました。

黄皓のコレクションより、オートモアイの作品

ジェレミー 僕は昨年くらいから実験的にリタイアをし、事業家ではない新しいライフスタイルを模索するなかで、コレクションを本格的に始めました。

 アートにはまり始めたのは2年ほど前、黄皓くんと同じく友人からアートオークションに誘われたことがきっかけです。当時の僕でも知っている、バンクシーをはじめとしたアーティストの作品が出品されていて驚きました。日本でもサザビーズのような本格的なオークションをやっていることを初めて知ることができて。それからはアートオークションに毎回足を運ぶようになり、プライマリー市場の存在や、アーティストと話す楽しみとか、作品を実際に買うということを学んでいきました。

──おふたりとも、アートにのめり込む最初のきっかけがオークションなんですね。

黄皓 そうですね。ただ2、3回オークションを経験すると、競り合った結果、割高で買っている感じがしてくるんです。それをきっかけに、気になった作家の絵をプライマリーで買うためにはどうしたらいいんだろうと考え始めました。作家のSNSをフォローして、展覧会の情報を知り、実作品を見させてもらうというかたちです。

黄皓の自宅にて。左から黄皓、ジェレミー

ジェレミー 僕は、もともと大学でオークションやギャンブルの統計学を勉強していたので、アートオークションを見ることそのものがとてもおもしろくて。オークションはアートの入り口として僕にはすごい刺さりましたね。落札結果をグラフにしたりとか、そこから傾向を読み取ったりとか。

 ビジネスではない価値観や楽しみを探していたとき、実業の対局にあるようなアーティストの活動は刺激的でした。その道で生きていける保証がない領域で、命をかけて作品をつくっているというのは、それだけで尊敬してしまう。いっぽうで、とんでもない値段が作品についたりするという、その予想のつかなさもとてもおもしろいと感じます。

 また、若手作家と話すことでそれぞれの頑張り方を知ることもできるし、作家たちが表現の領域で戦っていること自体にも惹かれていきました。いままでとは全然違う世界に触れることができたんですね。

 いま、事業家ではない道を模索するうえで、自分とはまったく反対側にいる人たちの話を聞けるということは、それだけですごい価値があると思っています。かつ、その価値がコレクションというかたちで所有でき、それが作家を応援している意思表示になるということも嬉しいです。なので、僕も最近はオークションより、プライマリーギャラリーで作家と話すことができる範囲で作品を購入しています。

黄皓 エンジェル投資に近いですよね。好きな会社を応援するように、好きな作家の絵を買う。もちろん、与えているだけではなく、その作品が自分の生活や考え方を豊かにしてくれるので。

ジェレミー 作品を購入することが作家の直接的な収入につながるし、自分が買ったらほかのコレクターも買いたいと思ってくれる。ビジネスへの目線が鋭いアーティストもいますけど、それも僕は結構好きなんですよね。アート業界だと必ずしもこれは賛同されない考え方なんでしょうが、僕は少なくとも仕事としてアートで食べられる作家が増える方がいいと思うし、僕が協力できるとしたらそこなのかな、と思っています。

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