神奈川県立近代美術館 鎌倉別館で開催予定だったコレクション展「日々を象(かたど)る」。絵画や素描、立体の作品を中心に、同館のコレクションから制作と(非)日常をめぐる作品を6つのセクションにより紹介する展覧会だった。
セクション1は「アトリエとその周辺」。日常の制作の場であるアトリエや、そこから足を延ばして見つけた風景を描いた作品を展示する。湘南の風景を描いた黒田清輝や岸田劉生、自身のアトリエを描いた青山義雄やアルベルト・ジャコメッティの作品を紹介。セクション2は「フランスの日々、日本の日々:佐野繁次郎の線描画とともに」として、戦前からフランスでアンリ・マティスに師事した佐野繁次郎と、戦後にヨーロッパを再訪した藤田嗣治や佐藤敬、初来訪した田淵安一や金山康喜らの活動を探る。
セクション3は自然の姿を描いた作品にフォーカスした「日々をつつむ自然 — みえないものを描きだす力」。細心の色彩選択で「緑」に取り組んだ松本陽子、蓮に虚の空間を見出した西村盛雄のほか、李禹煥(リー・ウーファン)や小西真奈の作品を紹介。セクション4「歩く日々、佇む日々」は、人間の歩く姿をテーマに作品を展示。片岡球子が初代歌川広重の肖像と、画中画の《大はしあたけの夕立》を並べて描いた《面構 安藤広重》(1973)をはじめ、相笠昌義、浜田知明、瓜南直子らの作品を紹介。
セクション5は「虚(きょ)を型取る:岡崎和郎のオブジェ」。日用品や青果など、日々の生活に存在する「物」の外形、あるいはその「内部」を石膏で型抜きし、反転した「虚」の空間を塊として表現する岡崎和郎のオブジェを中心に紹介。セクション6「制作する日々:新収蔵の渡辺豊重作品・資料を機に」では、野外彫刻を同館で常設展示している渡辺豊重が、新たに寄贈したマケット、スケッチ、図面といった資料とともに、同館の野外彫刻に関する小品を展示していた。