太田洋愛(1910~1988)は、日本のボタニカル・アート(植物画)の先駆者。国立科学博物館の企画展「ボタニカルアートで楽しむ日本の桜 ―太田洋愛原画展―」は、関連資料とともに、太田が描いたサクラの水彩画約100点を紹介する展覧会だ。
愛知県に生まれ、中学在学中から洋画を学んだ太田。1929年に満州に渡り、同地の学校で「大賀ハス」の発掘などで知られる植物学者・大賀一郎に師事し、植物画の道に進む。48年の帰国後は『原色日本のラン』(1971)など図鑑や教科書の植物画を数多く手がけ、70年には「日本ボタニカルアート協会」を創立した。
そんな太田は65年から日本各地を旅してサクラの研究を続け、69年には岐阜県で新種「太田桜」を発見。そのサクラ研究の集大成とも言えるのが、73年に出版された植物学者・大井次三郎との共著『日本桜集』だ。
本展では同書の原画を多数展示するとともに、描画の素材となった枝から作成された貴重な押し花標本を初公開。また、日本に自生するサクラの種類や花見文化、そのなかで作出された園芸品種なども紹介。全体を通して、サクラの自然史研究における太田と大井の業績を再評価する内容となった。