「PAVILION」は東急中目黒駅の高架下に開業した複合施設「中目黒高架下」内、もっとも代官山寄りの場所に店を構える。入り口は二つ。昼と夜で別々のエントランスが用意され、来店者を飽きさせない工夫が見られる。
ランチタイム用のエントランスから入ると、まず目に飛び込んでくるのが西野達による幅5メートル以上にもおよぶコミッションワーク《What if someone finds out?》(2016)だ。一枚板でできた大きなメインダイニングを覆うように設置された同作は、街路灯とヴェスパ、そしてむき出しになったコンクリートの土台によって構成されている。天井高5メートルの同店だからこそできる演出と言えるだろう。
西野作品はこれだけではない。なんと女性用トイレには西野達の《Stuck It In From Behind!》(2016)が壁から"生えている"のだが、実はこの作品は、男性用トイレにもつながっている。アートを見ながら用を足す──なかなかない体験がここでは可能だ。
店内中心にあるバーカウンターの上空では巨大な球体がきらびやかな光を放っている。これは名和晃平によるコミッションワーク《Black Ball》(2016)だ。中心部のライトが内部の鏡面を照らし、鏡面それぞれが互いを反射することで、黒い表面の中に輝きに満ちた空間が生まれる。名和にとってまったく新しい形態の作品となっている。
またこのほかにも、コーエン・ヤングや、川島小鳥、conix、濱口健など、随所にアート作品が展示されており、どの席に座ってもなんらかの作品が見られるのは嬉しい。
なおディナータイムの入り口となるのは、なんと全長50メートルにもおよぶ回廊。ここには大西伸朗の《doramukan》(2013)が鎮座するほか、サカナクションの山口一郎が作業机として使っていたという大型デスクが、ウェイティングカウンターとして置かれているので、要チェックだ。
現代美術が凝縮された"アートレストラン"とでも言うべき「PAVILION」。遠山はなぜこのような店をオープンさせたのか。「海外からコレクターが来たときに、連れて行ける場所がなかった。我々がロンドンに行くと、Tramshed(ダミアン・ハーストの巨大なホルマリン漬け作品《Cock 'n' Bull》が店内の中央に展示されている)についつい行ってしまう。そういう感じで、海外や国内から東京に来た誰かを連れて行きたくなるような場所になるといいな、という思いがあった」。
今後、12月には品川にオープンするスープストックトーキョーの和風版である「おだし東京」にも作品を展示するという。また、アート作品からインスピレーションを受けたコンセプトの店をつくることも視野に入れていると語る遠山。コレクターであり、経営者である彼だからこそできる発想で、アートと食がどのようにつながっていくのか楽しみだ。