来年3月にリニューアルオープンする、大阪・天王寺の大阪市立美術館。開館に先立ち、竣工した館内が公開された。
大阪市立美術館は1936年に日本で3番目の公立美術館として、住友家本邸跡に開館。現在、国宝、重要文化財を含む約1万3500件を収蔵している。開館以来の規模となる今回の大規模改修では、国の登録有形文化財である建物の外観を保全するとともに、展示・収蔵環境を向上させ、無料ゾーンや公園の地上面から入ることができる新エントランスなどを整備。より親しまれ、開かれた美術館を実現しようとしている。
今回のリニューアルのおもなポイントを見ていこう。まずはエントランスだ。これまでは外から大階段を上って中央ホールへと入るかたちだったが、この階段の1階部分横に設けられた。
このエントランスにはミュージアムショップ、ロッカー、授乳室、救護室などが設置され、ここから本館の中央ホールや地下展示室(「天王寺ギャラリー」に名前を変更)へとアクセスできる。新設のエスカレーターを使えば、外の大階段を上らずに中央ホールへとたどり着くことが可能となった。
中央ホールは誰もが出入りできるようになり、美術館の東西を結ぶ役割を果たす。館の東側にある日本庭園・慶沢園へも、ホールを経由することで館内から直接アクセスすることが可能だ。
リニューアル前は、ホール中央の天井に同館の顔として親しまれた巨大なシャンデリアがあったが、耐震のために天井ごと撤去。その際に開館当時の天井が出現したためこれを活かし、迫力ある梁が見えるかたちで天井を整備した。
中央ホール北側の旧展示室は、「じゃおりうむ」と名付けられ、ワークショップや講演などを実施する多目的ホールとしてリニューアルした。この部屋は開館当初、天井から自然光が取り入る構造だったが、それゆえに近年は展示室としての利用が難しかった。今回のリニューアルで広く交流の場として活かされることになり、自然光が入る天井も再現されることとなった。なお、この「じゃおりうむ」とは、中国語の「交流(jiaoliu)」とラテン語の「〜な場所、空間(-arium)」を組み合わせた造語だ。
展示室も、より良い観賞環境を提供するために手が加えられた。北側展示室は1階、2階ともに最新の照明設備が入った壁面ケースを設置。ケース下部には免震装置も導入されている。また、2階の第13展示室には幅13メートルを超える国内最大級のケースも設置された。
半地下にある収蔵エリアも大幅に拡大。かつて旧食堂や美術研究所だったスペース等を利用し、改修前は760平米だった収蔵スペースの面積は、今回のリニューアルで1360平米と79パーセントもの増加となった。また、地下であることを考慮し、雨水対策のための貯水槽も新造されている。
さらに、かつてはイベントや図書閲覧などができた旧美術ホールは、カフェとしてリニューアル。オリジナルの窓と天井を活かした、慶沢園を臨める空間となった。
ほかにも、展示室と収蔵庫を直接結ぶエレベーターを増設。開館しながらの展示替えを可能とすることで、年間300日の開館を目指すという。加えて地下展示室は名称を「天王寺ギャラリー」とし、公募展などを開催していく方針だ。
こけら落としはリニューアルオープン記念特別展として「What's New! 大阪市立美術館 名品珍品大公開!!」を2025年3月1日~3月30日の会期で開催。日本・東洋美術を中心に約8500件に上るコレクションのなかから、選りすぐりを約200件展示する予定だ。