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美術館をいかに支援できるのか? 静岡県立美術館の新収蔵品展から考える

静岡県立美術館が4月11日より新収蔵品展を開催している。昨年逝去したアートコレクター・太田正樹によって寄贈された現代美術作品を中心に紹介する本展から、美術館を支援することについて考えたい。

文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

新収蔵品展の展示風景より、左からジュリアン・オピー《Shahnoza dancing in tartan mini, left》(2007)、村上隆《未知なる次元への旅立ち》《何時かきっと出会える!でも、今は別次元を2人彷徨う》(いずれも2016)

 アートコレクターはどのように美術館を支援することができるか。4月11日から静岡県立美術館で始まった新収蔵品展は、それを考えるためのヒントを与えてくれる。

 本展は、昨年逝去したアートコレクター・太田正樹(1933〜2022)によって寄贈された現代美術作品を中心に紹介するもの。静岡市(旧清水市)出身の太田は2004年、長年教鞭を取った早稲田大学を退職した後に故郷の静岡に居を移し、同館との交流を始めた。06年に同館で開催された「我が愛しのコレクション展」では、そのコレクションから現代美術作品20点を出品し、08年度からは、ほぼ毎年、数点ずつの作品を同館に寄贈し続けた。

 昨年、太田は今回の展覧会の出品作品を含む70点を一括で寄贈。約18年間にわたる寄贈作品総数は106点におよぶ。

 寄贈作品のなかには、中西夏之や荒川修作、宮島達男、村上隆、森万里子、加藤泉、小谷元彦、名和晃平などの国内作家のほか、アンディ・ウォーホルやジュリアン・オピー、アニッシュ・カプーア、イ・ブル、ダレン・アーモンドなど、現代美術の歴史をたどるうえで重要な海外作家の作品も含まれている。とくに寄贈作品106点のうち41点が李禹煥の作品であり、これまで李の油彩1点しか所蔵していなかった同館にとっては、初期の絵画から版画、水彩、ドローイングまで、李の平面における実践の軌跡や技法を見渡すことができる重要な作品群だ。

新収蔵品展の展示風景より、李禹煥の作品群

 今回の新収蔵品展では、李が1973年から描き始めた「線より」「点より」シリーズの各1点や、1990年代後半から取り組み始めた「照応」シリーズの1点、木版画《項A》《項B》(いずれも1979)、水彩画《Untitled》(1979)2点などに加え、斎藤義重やアンディ・ウォーホル、アニッシュ・カプーア、宮島達男、名和晃平などの作品が紹介されている。

新収蔵品展の展示風景より、左から李禹煥《点より》(1976)、《線より》(1975)
新収蔵品展の展示風景より、左からアニッシュ・カプーア《Monochrome (Garnet)》(2015)、宮島達男《Opposite Harmony No.7651/No.26886》(1990)、《C.F.Lifestructurism-no.13》(2009)

 同館館長の木下直之は4月18日に行われた記者発表会で、「美術館との関係が深まることによって太田さんはコレクターとは違う、サポーターの一面を持ち始めた」と話す。同館の学芸員とともにギャラリーをめぐり、同館のコレクションに欠けている部分を補うような作品を購入・寄贈。さらに同館のために作品をアーティストに発注し、美術館を育てることにも取り組んでいたという。

 本展に出品された村上隆の《未知なる次元への旅立ち》(2016)は、2015年に森美術館で開催された「村上隆の五百羅漢図展」の出品作に類する作品を求め、太田からの発注により制作された一例だ。こうした姿勢は、太田がかつてドイツに暮らした頃に当地の住民と美術館の関係に感銘を受け、日本でも個人が美術館を支援していくことを実践したいという思いにつながっているという。

新収蔵品展の展示風景より、左は村上隆《未知なる次元への旅立ち》(2016)

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