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東京都庭園美術館が今年も建物公開。アール・デコの貴重書とたどる戦間期の装飾美術

国内の代表的なアール・デコ建築である、旧朝香宮邸の東京都庭園美術館。毎年恒例となっているその建物に焦点を当てた展覧会「建物公開2022 アール・デコの貴重書」が開幕した。

展示風景より、本館の大食堂

 東京都庭園美術館で恒例となっている、その建物に焦点を当てた展覧会「建物公開2022 アール・デコの貴重書」が開幕した。会期は6月12日まで。

東京都庭園美術館

 東京都庭園美術館の本館の建物は、朝香宮夫妻の邸宅として1933年に竣工。フランス直輸入のアール・デコの意匠をふんだんに取り入れた建築としてよく知られている。同館では毎年テーマを設けてその建物の紹介をテーマとした展覧会を実施しており、2022年のテーマは「アール・デコの貴重書」とされた。

展示風景より、本館の大広間

 館内のいたるところに、同館が長年にわたり調査研究のために集めてきた資料が展示され、また新館のホワイトキューブでは邸宅建設時に室内装飾に関わった3人の装飾家の仕事に光を当てる展示などが行われる。

展示風景より、本館の大客室

 まずは本館の展示風景から見ていこう。室内装飾家のアンリ・ラパンが内装設計をした本館の主要な部屋では、邸宅として使用されていた往時の様子が、家具や小物を使って華やかに再現された。例えば、大食堂にはテーブルが持ち込まれ、テーブルセットとともに書籍を配置され、当時の華やかな食卓を想起させる。

展示風景より、本館の大食堂
展示風景より、本館の大食堂

 作品保護やパネル設置のため、通常の展示では閉められていることが多い暗幕のカーテン等も開け放たれた。初夏の明るい日差しがふんだんに入る館内で、隅々にまであしらわれた意匠を楽しみたい。

展示風景より、本館の階段
展示風景より、本館の姫宮居間

 通常の展示時には空となっている書庫には、イミテーションではあるが本とともに照明器具が陳列。その荘厳な雰囲気がよく伝わってくる。また、隣の書斎もデスクの上に本や便箋がまるでいまも現役であるかのように配置されており、実際に使われていた様子を想像できる。

展示風景より、本館の書庫
展示風景より、本館の書斎

 本展で展示されている書物は1920~30年代のものが中心。朝香宮家に関する資料、本館建築の資料、そして広くアールデコに関する資料などが、本館、新館あわせて200点以上の冊数が集まった。

 次に、新館で行われている展示を紹介したい。とくに旧朝香宮邸の装飾に携わったアンリ・ラパン(1873〜1939)、レイモン・シュブ(1891〜1970)、マックス・アングラン(1908〜1969)の3人に焦点を当てた展示は、本館の装飾をより深く楽しめる企画となっている。

 アンリ・ラパンは装飾美術でも活躍したフランスの画家/デザイナーで、旧朝香宮邸では7室の内装デザインを手がけた。大広間や大食堂といった、庭園美術館の代表的な部屋はラパンの手によるもので、新館の展示ではラパンが手がけたインテリアや装飾用の彫刻を知ることができる資料が並ぶ。

展示風景より、新館

 レイモン・シュブは鉄工芸家として、曲線と幾何学模様を使用した鉄工芸を生み出した、アール・デコを代表する作家のひとりだ。本館大客室のガラス扉上の飾りはシュブによるもので、新館で紹介されるシュブのほかの鉄工芸装飾の写真と比較するのも一興だろう。

展示風景より、本館大客室のガラス扉
展示風景より、アンリ・クルーゾー編『現代の鉄工芸 3』(1930)

 ガラスを素材とした工芸を手がけたマックス・アングランは、大客室と大食堂のスライドドアや両開き扉のエッチングガラスを手がけている。新館ではアングランが表紙を手がけた月刊誌が展示され、そのグラフィカルな作風の豊かなバリエーションを知ることができるはずだ。

展示風景より、『アール・エ・アンデュストリー(芸術と産業)』1933年1〜12月号

 また、新館ではほかにも、アール・デコの名称の由来となった1925年のパリ万国博覧会や、各国に広がっていたアール・デコの様式など、戦間期の装飾をめぐる動向をいまに伝える豊富な資料を見ることができる。

展示風景より、アール・ヴィヴォン編『1925年パリ現代装飾美術・産業美術国際博覧会』(1925)
新館展示風景より
展示風景より、ガブリエル・アンリオ編『新しいショーウィンドウと店内陳列』など

 初めて東京都庭園美術館を訪れる人はもちろん、幾度も訪れている人にも新たな発見を建築と装飾の観点から提示する展覧会。庭園の新緑とともに楽しんでみてはいかがだろうか。

展示風景より、殿下居間

編集部

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